松隈章 著
2015年07月03日
書名にある建物の名前は「ちょうちくきょ」と読む。かくいうわたしも最初は何と読むのか、戸惑った。藤井厚二という建築家の名前も知らなかった。
『聴竹居――藤井厚二の木造モダニズム建築』(松隈章 著 平凡社)
京都が住みにくいので、大阪との間に手頃な家を探したことがあり、そのときには大山崎も候補だったが、行ってみると湿気が多いのでやめにした。そこにこんなすばらしい家があったとは!
建築家藤井は1888年の生まれ。広島の人で、東京帝国大学建築学科を卒業の後、竹中工務店に勤めたが、31歳のときに退社し、やがて京都帝国大学の講師、助教授、そして教授となる。
その藤井が40歳のときに大山崎に建てたのが「聴竹居」である。なるほど「竹の音を聴く住まい」か。
夏は蒸し暑く、冬は寒い日本。そんな気候にふさわしい日本の家の理想を追い求めた成果がここにある。
写真と図版をふんだんに使って紹介した本書を読んでいると、梅雨時のうっとうしさを忘れられる。特に夏の暮らしに配慮して、床下換気口を設けたことなど、なるほどと思える。
いわく、「全ての部屋は、夏季に自由な換気のために夜間まで開け放てる設備を備える必要がある。そしてもし可能なら、家全体がいわば一室になるようにする」(39ページ)。なるほど。
どの部屋も気持ちよさそうで、是非訪れてみたいと思わせるけれど、虫が多く出てきたらどうしようかと思ってしまうのが小人の情けないところ。でも、書斎にはあこがれる。
それと藤井デザインの家具。椅子は座り心地がよさそうだ。ヨーロッパにも足を運んだ藤井だけに、調理室のおしゃれなこと。一度是非訪れてみたい。
*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。
*「神保町の匠」のバックナンバーはこちらで。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください