鈴木京一(すずき・きょういち) 朝日新聞文化くらし編集部ラジオ・テレビ担当部長
1963年生まれ。東京大学教養学部卒。1987年、朝日新聞社入社。東京と大阪の旧学芸部や文化グループで、主に論壇関係の取材記者や編集者をしてきた。女性アイドルのライブ見物が20年来の趣味。好物は「ハロー!プロジェクト」。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
コンサートのあいさつで異例の「応酬」
「私は5人でやっていきたかった」
「じゃあ何であのときバラバラになっていいって言ったんですか」
「私は3人が卒業しても構わないなんて思ってもいないし言ってもいない。ていうか今それは話すべきではないと私は思います。もう(卒業すると)決めたんでしょ」
「決めました。だけどうそはついてほしくない」
「私がうそをついたって言いたいの?」
7月12日、中野サンプラザであった5人組「ドロシーリトルハッピー」のコンサートのアンコール、5人中3人が卒業する、そのあいさつでの、残留するリーダー白戸佳奈と、卒業メンバー秋元瑠海との応酬だ。
普通なら空気を読まないオタクが一人くらい叫びそうなものだが、2200人の場内は水を打ったように静まり返り、客は少女たちのやりとりをかたずを飲んで見守った。アイドル史上でも例を見ない出来事だったと思う。
ドロシーは2010年に結成された、仙台に拠点を置く5人組。11年夏、お台場であったTOKYO IDOL FESTIVALで全国のアイドルオタクにも広く認知された。
新潟のNegiccoと並び、地方アイドルの雄とも言われ、代表曲「デモサヨナラ」での「好きよ~」「オレモ~」というコール&レスポンスは名物になっている。
3人の卒業という節目があったとはいえ、サンプラザ公演は満席となった。ステージは殺風景で、衣装替えもない地味なものだったが、かえって歌とダンスに対する自負が感じられた。
ドロシーの雲行きが変わったのは今年になってからだ。5人のうち、年少3人が別ユニット「callme」を結成、その後、4月末にこの3人が突如ドロシーからの卒業を発表した。
アンコールでのあいさつ、卒業組の一人・富永美杜は「正直とても不安です。変わっていくことが怖いです」と泣き崩れ、秋元も「私はドロシーリトルハッピーでいたかった」と話した。
ではなぜ卒業するのか。