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台湾映画『共犯』のチャン・ロンジー監督に聞く

「光と影の映画を楽しんでもらえればと思います」

西森路代 フリーライター

 映画『共犯』は、2012年に映画『光にふれる』でデビューし、その年の台湾金馬奨(台湾のアカデミー賞と言われている)で新人監督賞を受賞した、チャン・ロンジーの2作目の作品である。

 1作目では、視覚障害を持つピアニストを主人公に描いていた監督だが、2作目では、ある女子高生の死をきっかけに知り合い、戸惑う少年たちの姿を描いたミステリーとなっている。1作目とジャンルは違うが監督の作家性は貫かれているようにも思えるのは、彼の「その場の空気を切り取る」ような映像にあるのではないだろうか。来日した監督に話を伺った。

チャン・ロンジー監督 チャン・ロンジー監督
――前作は、視覚障害を持つ天才ピアニストを描いた『光にふれる』という作品でしたが、今回の『共犯』はミステリーで前作とぜんぜん違う作風になっていますね。

チャン・ロンジー この映画を撮るきっかけは、脚本を映画会社に見せてもらったのが始まりですね。それで、素晴らしい脚本だから、映画を撮りたいと思いました。
 『共犯』は、高校生が主人公で、ある少女の死から始まる物語です。だからトーンとして暗いものにならざるを得ませんが、最終的には人の温かさを描ければと思っていたんです。
 以前からミステリーも撮ってみたいと思っていたし、違う題材だけに、違うスタイルで撮ってみたいとも思いました。

――そもそも監督は、いつどんなきっかけで映画監督になりたいと思われたのですか?

チャン・ロンジー 本格的に映画を撮り始めたのは、大学院を卒業してからのことでした。高校は絵画の専攻で、大学でも絵画と写真を勉強していたんですが、その大学時代に短編映画を撮り始めました。大学1年生のときに初めて編集室で映像に音をつけていくときに衝撃を覚えました。映画というものは、人間の感覚を感じることができるんだと、その力を感じました。

『共犯』『共犯』 Double Edge Entertainment © 2014 All rights
『共犯』 Double Edge Entertainment © 2014 All rights 『共犯』 Double Edge Entertainment © 2014 All rights

――『共犯』のポスターなどのビジュアルは、1枚の絵のようで、何かを語りかけているように見えました。

チャン・ロンジー 映画の中の映像には、ストーリーを語るだけではなく、なんらかの感覚をもたらす力があると思います。映像から人物像を自然に作り上げていくことができる。それが映画のおもしろいところで、そこには気を配っています。
 映画は光と影の記憶の媒体ですから、脚本という文字の情報から、どうやって空気や雰囲気をどう作り上げていくかが、とても大事なんですね。あるロケーションの中で、空気や雰囲気をどう作るか、そこが重要なところだと思いますね。特に、色は重要です。それから、『共犯』の中では、このシーンでは雨がふっていたほうがいいのかどうかということも考え抜きました。

――『共犯』の中では、少年や少女の関係性や、SNSの使い方なども重要だったと思います。この点は、どのようにリアリティを深めていきましたか?

チャン・ロンジー 実際に学生たちに取材して、今の若者がどのようにコミュニケーションしているか、どんな音楽を聞いているか、どんなファッションが好きか、どんな心理状況なのかなどを、しっかり掴んでいきました。特にオーディションを行う中で、映画にも出てくる、母子家庭の高校生などともよく話を聞きました。

――この映画では、冒頭で亡くなる少女、シャー・ウェイチャオを演じたヤオ・アイニンさんの存在は重要だったんじゃないでしょうか。

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