「ていねいな暮らし」路線から文芸路線に?
2015年08月12日
あの『ビッグコミックオリジナル』が「戦後70周年増刊号」を出した。これを見た瞬間に思い出したのが『戦争中の暮しの記録』だ。あの『暮しの手帖』が、通常号を一冊まるごと、「庶民が見た戦争の思い出」だけの戦争特集にしてしまったという号。
……そんなこと言ったってわかる人は少なくなってるだろう。その『戦争中の……』が出たのは1969年(!)で、戦後から1980年ぐらいまでにかけて『暮しの手帖』という雑誌は、「消費者(=庶民)の側に徹底して立った生活雑誌」「反戦平和、どっちかといえば反体制雑誌」「広告がないから大企業相手に好きなことを言える雑誌」「商品テストの雑誌」という「泥臭い雑誌」としての確固としたイメージがあって、しかし編集長の花森安治が死んでから雑誌は迷走を始め、何回かのリニューアルを経て、今では「おしゃれなくらしの雑誌」になっている。
しかし、花森以後の迷走時期というのは唖然とするものがあって、何かの増刊号の表紙が、確か弁当の特集増刊号だったか。
タイトル文字を、海苔の画像を切り取って貼りつけてあるんだけど、海苔画像をどこのネットから取ってきたんだか、というような、解像度72dpiみたいな、バリバリにシャギーの入ったまま使ってあって、目を疑った。
花森安治が死んだ時に、故人を偲んでの話の中に、ブツ撮りのバックに使う赤い布を探し求めてどんなのを買ってきてもダメが出て、ついには染めさせて望みの色の布を手に入れた、しかしそれは白黒写真だった、ってな話を思い出していた。
「白黒写真だからそんなにこだわらなくても」って言ったら「これからはカラーの時代だ、編集者に色の感覚がなかったらどうする!」とものすごい剣幕で叱られた、っていうんだけど、そういう話を聞いてたからあの表紙にはたまげた。花森安治が恐怖の大王となって編集部を焼き尽くすぞ!と思ったものです。
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