「本当に、あなたは東亜日報に、あんなことを言ったのか?」
2015年08月18日
ぼくが2度目の「アンチヘイト」コーナーの展開を決め、商品を集め出した頃、朝日新聞の若い女性記者が取材に訪れた。ネットで「アンチヘイト本」のフェアをやっていると知り、取材したいというのだ。「アンチヘイト」コーナーの復活、常設化を決めておいてよかった、と思った。
まだ商品が揃い切っていない小さな平台の前で、彼女は熱心にぼくの話を聞いてくれた。
ここ数年、近隣国をおとしめ、いたずらに日本を賞揚するようタイトル、内容の本が次から次へと刊行され、書店の新刊コーナーを席巻してきたこと。そうした自店の新刊コーナーを見るたびにぼくが忸怩たる思いを抱いてきたこと。そんな出版状況と並行して、「在日」の方々を攻撃するヘイトスピーチやヘイトデモが現に行われていること。マスコミも出版界も、それを等閑視していた、それどころか、そうした潮流をビジネスチャンスととらえる向きさえあったこと。
そのことが話題になるたびに、「朝日も、よほど記事がなかったのでしょう」と、ぼくは苦笑いしていた。照れももちろんあったが、何よりぼく自身、本当に驚いていたのである。
紙の新聞の威力はまだまだ大きい。
古い友人が連絡をくれ、義母も褒めてくれた。ふだん交流があるわけでもないマンションの他の階の住人からも声をかけられた。後日、2年に一度の同窓会でも、久しぶりに会う旧友が記事を見たと肩を叩き、恩師が喜び讃えてくれた。
だが、夕刊とはいえ新聞の一面に載ったにもかかわらず、「アンチヘイト」フェアに批判的な人たちからは、ほとんど反応がなかった。
7月22日の午後に、韓国の新聞社「東亜日報」から取材の電話が入る。「朝日新聞の夕刊を見た」という。
ぼくは、慎重に言葉を選択しながら、丁寧に説明した。電話取材してきたのは、東京支局の記者で、日本語は上手だが、ネイティブではない。
そして国を問わず、マスコミというものは、あらかじめ準備したシナリオに沿った答えだけを拾い上げて記事にするものだ。ぼくも池袋時代に、愉快でない経験をしたことがある(☞田口久美子『書店繁盛記』ポプラ文庫、P70~)。
今回、「彼ら」の反応は早かった。翌日、「東亜日報の記事を見たか?
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