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[6]「常連贔屓」の汚名返上! 

そしてリスクは負ってみたけれど……

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

 ジャコブ引退前なら選ばれていたような大物が落選した半面、今年は新鮮な監督の名前がコンペ部門に多く並んだ。まだ完全に「大物」としての評価が定まっているわけではない監督の作品が、コンペ部門に数多く引き上げられたのだ。

 例年コンペには20本前後が選ばれるが、今年は19本。そのうちの9本、つまり約半分がコンペ入りが「当然」とまでは言えない「未来の大物候補監督」だった。「常連を贔屓する」と揶揄されるカンヌにおいて、こんな年は非常に珍しいだろう。

 具体的には、
 【コンペに入るのが「当然」と思われる大物監督】
 トッド・ヘインズ(アメリカ)
 ジャック・オディアール(フランス)
 マッテオ・ガローネ(イタリア)
 ナンニ・モレッティ(イタリア)
 ホウ・シャオシェン(台湾)
 ジャ・ジャンクー(中国)
 ドゥニ・ヴィルヌーヴ(カナダ・初コンペ)
 ガス・ヴァン・サント(アメリカ)
 是枝裕和(日本)
 パオロ・ソレンティーノ(イタリア)

 【コンペに入るのが「当然」とまでは言えない大物候補監督】
 ミシェル・フランコ(メキシコ・初コンペ)
 ステファヌ・ブリゼ(フランス・初コンペ)
 ヨアキム・トリアー(デンマーク・初コンペ)
 ジャスティン・カーゼル(オーストラリア・初コンペ)
 ヴァレリー・ドンゼッリ(フランス・初コンペ)
 マイウェン(フランス)
 ラスロ・ネメシュ(ハンガリー・初コンペ)
 ヨルゴス・ランティモス(ギリシャ・初コンペ)
 ギョーム・ニクルー(フランス・初コンペ)
 ……となるだろうか。

 便宜上分類してみたものの、コンペ入りが当然の「大物か否か」を判断するのに、線引きが難しい「境界線上の監督」もいる。

 例えばフランス人の女性監督マイウェン。彼女は2011年に一度『パリ警視庁: 未成年保護部隊』でコンペ入りし、しかも審査員賞まで受賞したから、2度目のコンペ入りは「当然」としてもよさそうなもの。だが同時に、「アルノー・デプレシャンを蹴落としまで彼女の作品を選ぶのは変」と思わせる空気も、確実にあるのだ。

 これは監督の実力の有無の問題というよりは、一般に映画ジャーナリスト間ですでに共有されている監督の格付け問題なのだろうが。

 一方、日本でも『灼熱の魂』でファンの多いカナダ人のドゥニ・ヴィルヌーヴは、今回がカンヌ初参加&初コンペであった。だが彼の場合は『灼熱の魂』がアカデミー外国語映画賞を受賞しており、すでに監督の格が高いと言える。したがってコンペ入りは妥当として良いだろう。

「未来の大者候補」が前面に

 さてコンペ入りした監督を見ると、若返り化もまた非常に顕著だったことに気がつく。2014年は『マミー』をひっさげて登場した “弱冠25歳・グザヴィエ・ドランの衝撃”があったが、それでも彼と同時に審査委員賞を分け合ったのは、巨匠中の巨匠、御歳83歳のジャン=リュック・ゴダールだった。 ・・・ログインして読む
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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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