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 ジル・ジャコブの後を継ぎ、今年から新会長に就任したピエール・レスキュールの仕事について考えたい。

 会長職は映画を選定するディレクター職より、外から見ると何をやっているのかが見えにくい謎の職業かもしれない。実際、そう考えるフランスのジャーナリストも多いようで、レスキュールに直接その旨をたずねたインタビューをいくつか見かけた。

記者会見時のピエール・レスキュール
©Olivier Vigerie
拡大記者会見時のピエール・レスキュール  (c)Olivier Vigerie
 そんな時、レスキュールは自身の会長職の一義的な役割を、「映画祭の経済的な健康状態の責任を負うこと」と要約している。

 つまり会長の重要な仕事とは全体的な予算の管理であり、映画祭の成功に向け、公的・私的機関を含めた映画祭パートナーと良い関係を保ちながら交渉を進めていくことのようだ。これはジャコブも当然行っていたことだろう。

 だがレスキュールは、偉大な前任者の仕事を継承するだけのつもりではないことも公言している。

 彼はジャコブを、「批評家出身だから、ジャーナリスト出身の自分とは異なる素質の人物」と分析する。ジャーナリスト出身の自分は、映画1本1本を細かく判断するより、「むしろ物事の大きな歴史や、才能同士がいかに出会い、結ばれていくかの流れに興味がある」と語っているのだ。

 業界人としてのレスキュールの歩みが、映画畑一辺倒でなかったことは以前に触れた通り。テレビのポップカルチャー番組を担当し、テレビ局や劇場の経営に携わり、デジタル時代の報告書を政府に提出するなど、メディアの海原を縦横無尽に渡り歩いてきた人物である。

 彼自身も「私は文学も音楽も演劇も好き。クリエーションに対するこの普遍的な好奇心を介して、(会長として)レスキュールらしさを表現したい」と抱負を語っている。

 ではそんなレスキュール節を踏まえ、新会長として実際にどのような変化を今年のカンヌにもたらしたのかを見てみよう。

 まず視覚的に目立った変化を遂げたのが、

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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