林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
レスキュール就任による2つ目の影響は、より強力になったスポンサーの存在感である。
映画祭開始の1カ月前に当たる4月16日、パリのシャンゼリゼ大通りにあるシネコンで、恒例の招待作品を発表する記者会見が開かれたが、それを裏付ける象徴的なやりとりがあった。
招待作品の発表に入る前、レスキュールは5分以上にわたって今年のスポンサーの紹介に時間を使ったのだ。とりわけ新しくスポンサーに加わったケリング社への謝辞を長めに述べていた。映画が主役の会見としてはこれまでにない展開であり、ジャーナリストたちはやや当惑気味でもあった。
ケリング社は実業家フランソワ・ピノーが設立した会社で、グッチやイヴ・サンローランを傘下におさめるファッション・宝飾関連の巨大企業組織。ピノーといえば、レスキュールがかつてディレクターを務めていたマルニー劇場の所有者だから、それを考えるとピノー家との友好関係は、そのままカンヌ映画祭に持ち越されたとも言える。
レスキュールは会見で、今年からケリング社と5年契約を結び、単なる経済的なスポンサーという枠を超え、映画祭運営の内容についても協力し合うと発表した。
この協力とは「Women in Motion」という女性映画人の応援企画だ。
これまで「女性監督の紹介が足りない」と批判されてきたカンヌ映画祭にとっても、女性からの支持が命綱のブランドを多数抱えるケリング社にとっても、双方にイメージアップを図れるWin-Win企画ではないだろうか。
本企画の内容だが、映画に対する女性の貢献に光を当てるというもので、現地では期間中に女優のイザベラ・ロッセリーニやイザベル・ユペール、
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