2015年10月09日
イルミネーション・エンタ−テインメント社が製作した3D-CG長編アニメーション『ミニオンズ』(アメリカ公開7月10日、日本公開7月31日)の勢いが止まらない。
10月1日現在で、全世界興行収入が11億4531万ドル(約1374億3720万円/1ドル=120円計算)を突破。アニメーション映画の歴代興行収入(以下、興収)で第2位となっている。
9月13日からは中国でも公開が始まり、公開初日だけで約1880万ドル(約22億5600万円)というアニメーション映画興行の国内新記録を達成(9月18日付『シネマトゥデイ』)。あと1.3億ドル(約156億円)を稼ぐことが出来れば、第1位の『アナと雪の女王』(2013年)の12億7421万ドルを超える。
一方、同時期公開の最大のライバルと目されたピクサー製作・ディズニー配給の3D-CG長編アニメーション『インサイド・ヘッド』の世界興収は7923万ドル(約950億7600万円)に達している。こちらもピクサー作品歴代3位の大ヒットを記録したが、『ミニオンズ』には突き放された形となった。『インサイド・ヘッド』が振るわなかったのではなく、『ミニオンズ』の動員がそれほど桁外れに伸び続けたということだ(表1参照)。
ミニオンたちが最初に登場した作品はシリーズ第1作『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)である。
ミニオン“Minion”とは「手下、子分」の意味。主人公のグルーを支える、文字通り「手下たち」の設定であったが、その正体不明の黄色いキャラクターたちは世界中で注目の的となった。
3年後に公開されたシリーズ第2作『怪盗グルーミニオン危機一髪』(2013年)では、その役割は更に大きくなり、ミニオンしか登場しない予告編が制作されるなど、主役を押しのけるほどの存在に成長。
そして、シリーズ第3作目となる本作『ミニオンズ』では、スピンオフとしてついに主役の座を射止めた。
『怪盗グルー』シリーズは世界中で大ヒットを記録したが、驚くべきは日本の興行成績である。
日本興収は、第1作が12億円、第2作が23億円、そして第3作『ミニオンズ』は公開54日目で50.8億円、観客動員は421万人を超え、未だロングラン中だ。1作毎に倍増という、文字通り「ホップ・ステップ・ジャンプ」の奇跡的上昇を果たしている。
この数値は、今夏の国内アニメーション映画興行でトップを独走した細田守監督の2D大作『バケモノの子』(公開44日間で興収51億円、動員400万人を突破)とほぼ互角の成績である。
国産の2Dアニメーション長編が量産されている日本では、元より海外長編アニメーションのヒット作は数少ない。
スタジオジブリ作品を筆頭に、毎年製作される『劇場版ポケットモンスター』『映画ドラえもん』などの新作が30億円を超える興収を連発。お馴染みのキャラクターが活躍する諸作がファミリーを中心とした幅広い客層を吸収し、同時期公開の海外作品動員の障壁となっていた。
唯一の例外はご存知ディズニー/ピクサー作品である(表2参照)。
これまで、日本で興収30億円を超えた海外長編アニメーションはディズニー/ピクサー作品しか存在しなかった。ドリームワークス、ブルースカイほか米のライバル各社の作品は幾ら全世界でヒットしても、国内興行は今ひとつ振るわなかった(表3参照)。
『シュレック』4作(ドリームワークス)、『マダガスカル』3作(同)『アイス・エイジ』4作(ブルースカイ)などもアメリカでは全作大成功を収めたが、日本では1作毎に先細りであった。
ドリームワークスの『ヒックとドラゴン』(2010年)は第1作が大敗した為、数々の賞を受賞した続編『ヒックとドラゴン2』(2014年)は日本ではソフト発売だけに終わった。ライカ社の人形アニメーション長編も『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012年)が惨敗したことで、新作『The Boxtrolls』(2014年/原題)は公開の予定がない。
イルミネーション社製作の『怪盗グルー』シリーズ以外の長編『イースターラビットのキャンディ工場』(2011年)、『ロラックスおじさんの秘密の種』(2012年)も日本興行は不発に終わっている。
つまり、ミニオンの登場するシリーズだけが、ディズニー/ピクサーと肩を並べる「シリーズとしての成功」を手にした。しかし、両者の作風はまるで異なる。
ディズニーの大ヒット作『アナと雪の女王』
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