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興奮! 『ジュラシック・ワールド』(上)

第1作のみごとな<本歌取り>

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 シリーズ物のむずかしさは、それ以前の作品の趣向や設定をふまえつつ、マンネリに陥らずにシリーズをいかに面白くアップデートできるかにある。

 つまり、シリーズ第1作以降の作品が成功するには、既視感に加えて、斬新さ・新味――いわば「未視感」――が必要なのだ。この困難をクリアできずに、第1作を超えられなかった様々なジャンルの「続編」は多い。その典型例が『ゴジラ』シリーズであろう。

 では、これまでの『ジュラシック・パーク』シリーズはどうか。

 2作目の『ロストワールド/ジュラシック・パーク』(1997)、3作目の『ジュラシック・パークIII』(2001)は、けっして凡作ではなかったが、目を見張るような斬新さには欠けていた。

ジュラシック・ワールド拡大『ジュラシック・ワールド』
 よってスリル・興奮・恐怖の点で、やはりあの記念碑的な名品である第1作『ジュラシック・パーク』(1993、以下『1』)には、遠く及ばなかった。

 なので私は、シリーズ第4作『ジュラシック・ワールド』(コリン・トレボロウ監督)にも、さほど期待していなかった。

 だが予想に反して、本作は『1』に勝るとも劣らない出来ばえだった。

“生物学的ホラー”

 まず、既視感と未視感がうまくミックスされ、第1作の再起動/リブート、ないしは<本歌取り>にみごと成功している。

 そして、身震いするほど迫真的な恐竜の映像に加えて、

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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