メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

興奮! 『ジュラシック・ワールド』(中)

安全神話崩壊の恐怖

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 前回も述べたが、“ジュラシック・ワールド”の最大の売りは、凶暴な肉食恐竜を安全な場所から眺めて楽しむ、驚異的なスペクタクル/見世物だ。

 そこで観客たちは、安全と危険が紙一重で隣り合っているかのようなスリルを体験できたのである。少なくとも、“悪魔の恐竜”インドミナス・レックスが脱走するまでは――。

フランケンシュタイン拡大人間が創った生命体が「モンスター」と化したという意味では、フランケンシュタインも『ジュラッシク・ワールド』の恐竜も同じだ
 そして当然ながら、こうしたアトラクションのあり方には、怪獣パニック映画やホラー映画のアナロジー/類似物という側面がある。

 つまり“ジュラシック・ワールド”は、恐怖や怪異を観客が見世物として楽しむスペクタクル施設である点で、恐竜映画やホラー映画を上映する映画館と相似的な空間だ(恐竜などのキャラクターグッズ・原作本・ノベライズ本などの関連商品を売る“メディア・ミックス”商法も、両者に共通している)。

 ただし映画館とはちがい、“ジュラシック・ワールド”の肉食恐竜ゾーンや動物園の猛獣コーナーでは、観客の安全ためのフェンスや檻などの<境界>が不可欠となる。

 もっとも、100パーセント安全だと思われていた強固な防護フェンスが破壊され(安全神話が崩れ)、モンスターが<こちら側>に躍り出てくる、というのが、『ジュラシック・ワールド』その他の少なからぬ怪獣映画の肝だ。

 それはつまり、安全圏と危険エリアの境界消失という、万全と思われた危機管理体制の瓦解である。

 ちなみに、安全と危険が隣り合っているかのような臨場感を体験する動物園に、車に乗って放し飼いにされた野生動物を観覧するサファリ・パークがあるが、前記の観客を乗せた球形の乗り物/ジャイロスフィアの走行エリアは、まさしく恐竜のサファリ・パークそのものだ。

 また野球場の、 ・・・ログインして読む
(残り:約1713文字/本文:約2503文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

藤崎康の記事

もっと見る