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興奮! 『ジュラシック・ワールド』(下)

物語展開の妙など

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 『ジュラシック・ワールド』では、各場面がスムーズに連鎖していく展開――いわばダレ場がつねにヤマ場への導線になる――ゆえ、観客の興味は途切れることがない。

 たとえば終盤、脱走した狡猾残忍なインドミナス・レックスに洗脳(!)されかかったラプトルたちと、オーウェンは首尾よく意思疎通し、ラプトルたちは果敢にインドミナスに立ち向かってゆく(この展開の布石は、序盤の彼によるラプトルたちの飼い馴らし実験の場面)。

<序破急>の繰り返し

 また、インドミナス脱走後の展開はといえば、

→安全圏に思われたエリアでジャイロスフィアを乗り回していたグレイとザックがインドミナスに遭遇、あわやというところでラグーンに飛び込み難を逃れる。

→その後インドミナスは翼竜園のフェンスを破壊し、空飛ぶ肉食竜どもを脱走させ、結果パークは大パニックとなり、前記のヘリコプター墜落その他の人命被害を出す。

→ラスト近く、クレアは最後の切り札としてティラサウルスをパドックから解き放ち、インドミナスと闘わせる。

→ティラノサウルスとラプトルたちを敵に回したインドミナスは、ラグーン沿いの崖っぷちに追い詰められた挙げ句、突如水中から躍り出たモササウルスの巨大な口に呑み込まれる(俯瞰ショット)。

 このように、ティラノとラプトルがインドミナスに立ち向かい、それまで2度水中から現われたモササウルスが3度目の出現で物語に決着をつける、という鮮やかな展開だが、大まかに言って本作の物語は、<序破急>の繰り返しで描かれる(<序破急>は、「序」はゆっくり、「破」は中間、「急」は文字どおり速く展開する作劇のこと)。

 なお3度目に出現するモササウルスは、以前より数倍くらい巨大化しているが、それはそれでリアリズムを突き抜けた、映画ならではの痛快な荒技だ。

ミッション:インポシブル ローグネイション 拡大『ミッション:インポシブル/ローグネイション』
 ともあれ、『ジュラシック・ワールド』の充実ぶりは、同時期に公開された
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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