林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ここからは新しく生まれ変わったカンヌ映画祭の「今後」を予想したい。
まず2015年の映画祭で観察できた、お祭り男ピエール・レスキュールによる「スポンサーと協同して映画祭を盛り上げようとする姿勢」は、今後も続行されるだろう。
これは表面的には、前会長ジル・ジャコブが敷いてきた現実路線の発展的な継承だろう。
だがよくよく考えると、これはレスキュールの意志というよりは、むしろレスキュールを新会長に選んだ時点で、映画祭として「今後も積極的に発展路線を目指していく」という意志表明であったと思われる。
そう思えるのも新会長選出の裏には、なかなか象徴的な選出劇があったからだ。
当然ながら、世界最高峰の映画祭であるカンヌの新会長という名誉の椅子は、国内の多くの業界関係者が狙っていた。
ジャコブの引退表明後に数々の会長候補の名がまことしやかに流れる中、レスキュールと並んで新会長最有力候補と目されていたがのが、独仏共同出資のテレビ局アルテの創設者であるジェローム・クレマン。
彼はこれまた、レスキュールとはあらゆる意味で対照的な人物だ。まず性格そのものが派手めなレスキュールに対し、彼は影で力を発揮する堅実派タイプ。
だが最も決定的な違いは、彼こそがこの30年来、アメリカ文化隆盛の波を受ける欧州文化を守るべく、多文化奨励に尽力してきた人物だったということ。
彼は
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