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[3]男性不妊だったある妊活カップルの道のり

横田由美子 ジャーナリスト

「運動率」を突きつけられて

 「あんたなんか、タネなしのくせに!」

 「じゃあ、俺と離婚して、別の若い男と結婚すればいいじゃないか。お前は大丈夫なんだから、すぐ子ども出来るよ」

 無事に赤ちゃんを授かるまでの3年間、幾度こういう喧嘩をしたかわからないと、サトミさん(仮名、34)は振り返る。お互い思ってもいない言葉で相手を傷つけ、そしてその倍、自分たちも傷ついた。

 「精子が見えませんね」

 診断後、そう医師から告げられるまでは、さとみさんの方に何か不妊の原因があるのではと、サトミさんも夫(45)も考えていた。「男性不妊」という言葉を聞いたのも、その日が初めてだ。

初診時の問診票は、性機能について様々な質問が並ぶ男性不妊外来の問診票は、性機能について様々な質問が並ぶ=都内の産婦人科(本文とは関係ありません)

 不妊専門クリニックの門を叩くまでの1年間は、薬局などで排卵検査薬を購入し、排卵日付近に集中して性交渉を持つように二人で頑張ってきたが、全く妊娠の兆候は見られなかった。

 産婦人科の門を叩き、婦人科系の検査を受けたが、過程では医師も「あなたのどこが悪いんでしょうね。調べましょう」という雰囲気だったと、サトミさんは言う。

 不妊は夫婦の問題なのに、フーナー検査の診断結果が出るまで、「夫」の存在はどこにもなかった。ようやく夫の精子に問題があるとわかっても、それは「新たな出発点」に過ぎなかった。暗く長いトンネルの始まりだったのだ。

 「運動率10%」という数字的な結果をリアルに突きつけられ、夫の自尊心はずたずたになったはずだとサトミさんは慮る。

 一般社団法人 日本生殖医学会

 「こっちの病院の方が通勤時間にも合わせられて精神的にも身体的にも楽だし、いいんじゃないか」

 「値段は少し高いが不妊治療では有名だし、男性不妊にも強いから、この病院に行ってみよう」

 二人で話し合いながら幾つか転院を繰り返し、その間、人工授精は8回行った。安いクリニックでは、1回2万円強で済んだが、高いクリニックではその倍はかかる。

 「安かろう、悪かろうというクリニックが少なくないので、結局うまくいかなかった。では、高ければいいのかといえばそうではない。色々余計なものが乗せられて請求されたこともある」

 と、サトミさん。

 それなりに費用はかかるが、納得できる診断や施術を行ってくれる病院にたどりつくまで、3年近くの月日を要してしまったのだ。

家計を圧迫した不妊治療費

 精神的なストレスが影響したのか、夫の精子

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