メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

必見! 草野なつかの『螺旋銀河』(下)

独特の間合い、ショットの強度など

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 前回も述べたように、『螺旋銀河』でスリリングに描かれるのは、共同でラジオドラマの脚本を書いていく、綾と幸子の変転する関係であり、その描写のスリルは、ときに二人が意思の疎通を欠き、葛藤することで増幅される。

 では草野なつかは、こうした二人の関係のドラマをどのように演出しているのか。

螺旋銀河『螺旋銀河』
 まず注目すべきは、草野が、二人の感情や思いを、彼女らのセリフや表情だけで表そうとはせずに、セリフが発せられる前後の間合い=沈黙によって、じつに繊細につかまえていることだ。

 たとえば、二人が偶然出会う冒頭での、社員証によって互いの名前を知る彼女らのやりとりは、

・・・ログインして読む
(残り:約1179文字/本文:約1454文字)