企業とコンプライアンス、そして公(おおやけ)
2015年11月04日
それにしても空気の伝播力の何と凄まじいことか。読むとか読まないのレベルの話ではない。SARS(重症急性呼吸器症候群)かエボラ熱のごとく、たちまち世間に蔓延してしまう。
ちょっとだけ振り返ってみても、まず実感として嫌な雰囲気が露呈しはじめたのが2014年の3月。上野千鶴子さんの山梨市民講演会に市長が物言いをつけたあたりからだ。
これは中止が撤回されて無事行われたが、7月にはさいたま市大宮区の公民館で発行している月報に憲法九条を詠んだ句が掲載拒否された。
今年(2015年)7月、会田誠さんが、作品を展示している東京都現代美術館から撤去の要請を受けた。
会田誠一家作品の撤去を要請した美術館に物申す――権力をからかった程度で「過剰反応」(WEBRONZA)
それゆえにMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が一部からの批判を受け「自由と民主主義のための必読書50」というフェアを中断したという報道に触れて「またか……」と嘆くのは、いともたやすいことだろう。
「ジュンク堂、だらしないぞ!」と憤ったとして詮なくもない。
けれどもそれでは、猛威をふるうウイルスの本質は掴めない。
いったい現場ではいま、何が起こっているのか。限りなくそこに意識を降ろして考えてみなければならない。すると三つのキーワードが浮かんでくる。すなわち、企業とコンプライアンス、そして公(おおやけ)ということである。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください