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丸善ジュンク堂のフェア見直しが想起させること

企業とコンプライアンス、そして公(おおやけ)

大槻慎二 編集者、田畑書店社主

 それにしても空気の伝播力の何と凄まじいことか。読むとか読まないのレベルの話ではない。SARS(重症急性呼吸器症候群)かエボラ熱のごとく、たちまち世間に蔓延してしまう。

 ちょっとだけ振り返ってみても、まず実感として嫌な雰囲気が露呈しはじめたのが2014年の3月。上野千鶴子さんの山梨市民講演会に市長が物言いをつけたあたりからだ。

 これは中止が撤回されて無事行われたが、7月にはさいたま市大宮区の公民館で発行している月報に憲法九条を詠んだ句が掲載拒否された。

 今年(2015年)7月、会田誠さんが、作品を展示している東京都現代美術館から撤去の要請を受けた。

安保法シンポ、会場変え開催「安全保障関連法に反対する学者の会」と「SEALDs」のシンポジウムは会場を法政大学に変更して実施された
 そして最近の立教大学の「安全保障関連法に反対する学者の会」と「SEALDs」のシンポジウムの会場使用不許可まで、ほぼ1年半の間にこの種の話をいくつ聞いたことだろう。

 それゆえにMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が一部からの批判を受け「自由と民主主義のための必読書50」というフェアを中断したという報道に触れて「またか……」と嘆くのは、いともたやすいことだろう。

 「ジュンク堂、だらしないぞ!」と憤ったとして詮なくもない。

 けれどもそれでは、猛威をふるうウイルスの本質は掴めない。

世間一般との整合性

 いったい現場ではいま、何が起こっているのか。限りなくそこに意識を降ろして考えてみなければならない。すると三つのキーワードが浮かんでくる。すなわち、企業とコンプライアンス、そして公(おおやけ)ということである。

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