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丸善ジュンク堂の対応は商道徳に反する(下)

「自由と民主主義」とは関係なく、「損得勘定」を間違った

中川右介 編集者、作家

 ここで書店での「フェア」について説明しておく。

 実は、出版社にとってはフェアに出品するのは、あまりおいしい話ではない。ケースバイケースなので例外はあるが、私は小さい版元を経営していたので、以下、その経験に基づいて書く。

 フェアには2種類あり、ひとつは出版社が主導する、たとえば「新潮文庫の100冊」とか、映画化された本とその原作者の本を集中的に売るものだ。今回のはそういうフェアではなく、書店が企画したものだ。

ジュンク堂書店難波店にある安保の特設コーナー拡大書店では様々なフェアが企画される
 この書店が企画するフェアは、書店がテーマを決めて選書をし、その上で、出版社に対し、「こういうフェアをやるので、おたくの本を置きたいから、出品してくれ」と依頼する。

 通常の「注文」は原則として書店は返品できないが、フェアの場合は返品ができ、なおかつ、書店は通常は翌月に仕入れ代金を支払うが、フェアの場合は一定期間店頭に置くので、3カ月後とか半年後に払うという条件になる(これらの取引はすべて問屋である「取次」を仲介する)。

 出品した本がすべて売れてくれればいいが、そんなことは稀で、大半が返品となる。さらに、時には資金繰りの悪化にもつながる。

出版社とフェアとの関係

 数年前、ある書店からフェアをしたいと、50万円くらいの、月商200万円前後の私の会社としては大量の注文がきたことがある。 ・・・ログインして読む
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筆者

中川右介

中川右介(なかがわ・ゆうすけ) 編集者、作家

1960年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2014年まで出版社「アルファベータ」代表取締役として、専門誌「クラシックジャーナル」、音楽書、人文書を編集・発行。そのかたわら、クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲などについて、膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、歴史に新しい光を当てる独自のスタイルで執筆。著書は『カラヤンとフルトヴェングラー』『十一代目團十郎と六代目歌右衛門――悲劇の「神」と孤高の「女帝」』『月9――101のラブストーリー』(いずれも幻冬舎新書)、『山口百恵――赤と青とイミテイション・ゴールドと』『松田聖子と中森明菜――一九八〇年代の革命』(ともに朝日文庫)、『戦争交響楽――音楽家たちの第二次世界大戦』『SMAPと平成』(ともに朝日新書)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『角川映画 1976-1986(増補版) 』(角川文庫)、『怖いクラシック』(NHK出版新書)など50点を超える。

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