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丸善ジュンク堂の対応は商道徳に反する(下)

「自由と民主主義」とは関係なく、「損得勘定」を間違った

中川右介 編集者、作家

 ここで書店での「フェア」について説明しておく。

 実は、出版社にとってはフェアに出品するのは、あまりおいしい話ではない。ケースバイケースなので例外はあるが、私は小さい版元を経営していたので、以下、その経験に基づいて書く。

 フェアには2種類あり、ひとつは出版社が主導する、たとえば「新潮文庫の100冊」とか、映画化された本とその原作者の本を集中的に売るものだ。今回のはそういうフェアではなく、書店が企画したものだ。

ジュンク堂書店難波店にある安保の特設コーナー書店では様々なフェアが企画される
 この書店が企画するフェアは、書店がテーマを決めて選書をし、その上で、出版社に対し、「こういうフェアをやるので、おたくの本を置きたいから、出品してくれ」と依頼する。

 通常の「注文」は原則として書店は返品できないが、フェアの場合は返品ができ、なおかつ、書店は通常は翌月に仕入れ代金を支払うが、フェアの場合は一定期間店頭に置くので、3カ月後とか半年後に払うという条件になる(これらの取引はすべて問屋である「取次」を仲介する)。

 出品した本がすべて売れてくれればいいが、そんなことは稀で、大半が返品となる。さらに、時には資金繰りの悪化にもつながる。

出版社とフェアとの関係

 数年前、ある書店からフェアをしたいと、50万円くらいの、月商200万円前後の私の会社としては大量の注文がきたことがある。

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