東京国際映画祭は、あえて世界のプロ向けに脱皮を
国際映画祭は外国プレスや映画会社を相手にした勝負である
古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)
今年(2015年)で30年目を迎えた東京国際映画祭(TIFF)が終わった。1985年の創設以来、いつも批判ばかりされてきた同映画祭だが、今年はかなりの大きな改革が見られた。どこが良くなったのか、それでもどこがダメなのかを見てゆきたい。

東京国際映画祭での記念撮影。『日本のいちばん長い日』に出演した役所広司さん(右から3人目)など=2015年10月22日、東京都港区
まず、今年の最大の特徴は、邦画重視だろう。
私もWEBRONZAの「東京国際映画祭はなぜダメなのか」などで指摘してきた通り、国際映画祭の最大の役割は自国映画の発信なのに、TIFFは30年もそのことを理解してこなかった。カンヌやベルリンを見れば誰でもわかることなのに。
今年は初めて日本映画を世界に売り込む姿勢が感じられた。まずコンペの邦画がこれまでは1本が普通だったのに、初めて3本になった。これは画期的だと思う。
さらに「JAPAN NOW」としてこの1年の邦画の秀作を見せるセクションが新たにできて、原田眞人監督の代表作5本もその枠で上映された。

東京国際映画祭(TIFF)会場=撮影・筆者
さらに「日本映画クラシックス」という部門もできて、『乱』の4Kデジタル復元版を始めとして邦画のデジタル復元版が7本上映された。
ほかにも、追悼特集「高倉健と生きた時代」や寺山修司生誕80年として4作品の上映もあった。
2014年から政府の助成金が増えたこともあるが、ようやく邦画の本格的発信が始まったと言えよう。これらは2012年から毎年私がここで提案してきたことだが、今年になって一挙に実現した感がある。
世界のジャーナリストは日本映画を探している
ところが残念なのは、
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