症例としてのファシスト
2016年01月19日
イタリアのファシズムをモチーフにした『暗殺の森』を、昨年(2015年)11月、久しぶりに東京・新宿武蔵野館のスクリーンで再見し、あらためてその強烈な魅力に酔わされた(DVDあり)。
1941年生まれのイタリアの名匠、ベルナルド・ベルトルッチ初期の傑作(1970)だが、ファシズムという病を大上段に批判するのではなく、あくまで、一人の男がファシストと化していく過程を、彼の少年期の性的トラウマとの関わりで――つまりケース・スタディ/症例分析として――炙(あぶ)り出す点に、この映画の突出したユニークさ、恐ろしさがある。
――メインとなる舞台は、第2次大戦前夜(1938)のファシスト党支配時代、すなわちムッソリーニ統帥による独裁体制下のイタリア。
大学の若い哲学教師マルチェッロ(ジャン=ルイ・トランティニアン)は、前述のように少年期の性的トラウマにさいなまれている。
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