<父殺し>というベルトルッチ的主題など
2016年02月10日
たとえば、やはり1970年に本作に先だって撮られた傑作、『暗殺のオペラ』は、反ファシスト運動の闘士として英雄化された父の裏切りを発見する息子のドラマだが、ベルトルッチ自身、この作品と『暗殺の森』についてこう語っている――「二つの映画に共通しているのは裏切りというテーマだ。また過去が現在に戻って来ること、父親の重要性という点も共通している。もっとも『暗殺の森』では、息子のトランティニアンが父親としてのクアドリ教授を裏切るのに対して、『暗殺のオペラ』では父(……)が裏切るという違いはあるのだが。いずれにせよ、それは過去や記憶を前提にした父殺しだ」(ベルナルド・ベルトルッチ『ベルトルッチ、クライマックス・シーン』、竹山博英・訳、筑摩書房、1989、87~88頁)。
このベルトルッチの言葉に付言すれば、先述のとおり、『暗殺の森』のマルチェッロ/トランティニアンは、「正常さ」に順応しようとして、父親的存在=恩師であるクアドリ教授を裏切り、みずからファシスト的父にならんとして挫折した男であった。
画面造形の点では、
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