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必見! ベルトルッチ『暗殺の森』(下)

<父殺し>というベルトルッチ的主題など

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

ベルナルド・ベルトルッチ監督/撮影・写真家グイド・フア氏=ローマ市内の自宅で2000年拡大ベルナルド・ベルトルッチ監督/撮影・写真家グイド・フア氏=2000年、ローマ市内の自宅で
 『暗殺の森』では、マルチェッロが恩師のクアドリ教授を裏切るという形で、<父殺し>のモチーフが端的に表れるが、事実、<裏切り>と結びついた<父殺し>および<父探し>の主題は、すぐれてベルトルッチ的だ。

 たとえば、やはり1970年に本作に先だって撮られた傑作、『暗殺のオペラ』は、反ファシスト運動の闘士として英雄化された父の裏切りを発見する息子のドラマだが、ベルトルッチ自身、この作品と『暗殺の森』についてこう語っている――「二つの映画に共通しているのは裏切りというテーマだ。また過去が現在に戻って来ること、父親の重要性という点も共通している。もっとも『暗殺の森』では、息子のトランティニアンが父親としてのクアドリ教授を裏切るのに対して、『暗殺のオペラ』では父(……)が裏切るという違いはあるのだが。いずれにせよ、それは過去や記憶を前提にした父殺しだ」(ベルナルド・ベルトルッチ『ベルトルッチ、クライマックス・シーン』、竹山博英・訳、筑摩書房、1989、87~88頁)。

 このベルトルッチの言葉に付言すれば、先述のとおり、『暗殺の森』のマルチェッロ/トランティニアンは、「正常さ」に順応しようとして、父親的存在=恩師であるクアドリ教授を裏切り、みずからファシスト的父にならんとして挫折した男であった。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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