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軽井沢バス事故の原因は日本的発想の欠点にある

自由への規制よりも責任の強化を

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 またバスの死亡事故が起きてしまいました。2016年1月15日、25名を乗せたスキーツアーバスが、長野県軽井沢の碓氷峠を走行中に転倒する事故が発生。大学生を中心に、尊い15名の命が失われる大惨事となり、各メディアでも連日のように報道されていました。

 報道によって、事故を起こした事業者の法令違反や安全意識に対する低さが浮き彫りになり、激しい憤りを覚える人も少なくなかったはずです。

 そして、マスコミや識者の間に、今回の事故の原因を2000年代の小泉政権に進められたバスの規制緩和に見出す人が数多くいました。

バス会社「イーエスピー」に強制捜査に入る東京労働局の職員運行会社「イーエスピー」に強制捜査に入る東京労働局の職員=2016年1月21日
 当時、規制緩和が大々的に進められ、バス事業者も免許制から認可制に移行しました。

 競争が激しくなったことで、消費者に低価格商品等のメリットがもたらされた一方で、デメリットの発生も指摘されていました。

 確かに、過当競争が発生したことによって労働環境の悪化などが見られるようになり、それが2012年に起こった関越道のスキーツアーバス事故のような大惨事が発生しやすい土壌を生んだのも事実でしょう。

 ただし、そのような「安全置き去りの規制緩和」という見方で規制緩和を悪者に仕立て上げる意見や、再度規制強化を行うべきであるという意見には、大変疑問を感じます。

 そのような発想は本質的ではない解決方法であり、今後の事故発生を無くすというミッションを果たすことはできないと考えています。

弱過ぎる罰則

 今回の事故のケースを見れば、旅行会社のキースツアーと運行会社のイーエスピーは、ルートの無断変更や、国の基準よりも低い料金での契約など、様々な法令違反を行っています。事故2日前には、従業員13名中10名の健康診断を行っていないことで行政処分も受けています。

 つまり、小泉政権の規制緩和云々の前に、単純に現状の法令や安全基準が遵守されていなかった問題に過ぎないのです。

 では、なぜ運行会社や旅行会社は、法令や安全基準を無視した行動を取ったのでしょうか?

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