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必見! トッド・ヘインズ『キャロル』(下)

50年代アメリカのダークサイドなど

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

「ユートピア」の裏面

 今回は、『キャロル』の舞台となった、1950年代アメリカの――とりわけその郊外の――ライフスタイル、政治的背景について、(ディヴィッド・ハルバースタム『ザ・フィフティーズ――1950年代アメリカの光と影』1~3巻<筑摩書房、2015、峯村利哉・訳>、および同書の1巻、3巻の越智道雄・町山智浩による解説対談を参照しつつ、ざっとおさらいしておこう。

デイビッド・ハルバースタム拡大デイビッド・ハルバースタム
 また前回までに触れえなかった、『キャロル』の演出上および構成上の注目点について、<付記>としてコメントしたい。

 50年代のアメリカは、戦後の混乱から脱して未曾有(みぞう)の経済的発展を遂げ、「中産階級が拡大し、核家族が郊外の庭付き一戸建てを買い、自動車、テレビ、家電製品をそろえるという」(町山)、アメリカン・ドリームが実現されたかのような繁栄の絶頂期を迎えた。

 よって当時の、生活水準が急上昇したアメリカは、ヨーロッパやアジアの諸国にとっては「夢のような」ユートピアに映ったのである。

 しかしながら、それは50年代の表層部分であり、その裏面では、 ・・・ログインして読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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