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残るのは『WiLL』か『月刊Hanada』か?

保守系月刊誌に、2誌が成り立つ市場はなし

山口一臣 朝日新聞東京本社フォーラム事務局

 保守系の月刊論壇誌『WiLL』(ワック)の名物編集長だった花田紀凱(かずよし)さん(73)が飛鳥新社に移籍して新雑誌『月刊Hanada』を創刊した。4月26日に発売された。飛鳥新社のホームページには、〈「月刊Hanada」創刊のお知らせ〉として花田編集長の挨拶が載っている。

 〈これまで『WiLL』を制作していた編集部全員(5人)とDTP担当者がそろって飛鳥新社に「電撃移籍」しました。新創刊の『月刊Hanada』は一段とパワーアップ。スクープも含め、内容はさらに充実。低迷する雑誌界に活を入れます。=中略=おもしろくて、ためになる。そして「大人の常識を!」〉

 「おもしろくて、ためになる」は講談社の標語だろッ! と突っ込みどころはあるにしても(笑)、文面からは花田さんの並々ならぬ意欲が伝わってくる。花田さん、相変わらず面白がってやってんだろうな。70歳を過ぎて新雑誌なんて、羨ましい限りである。

前段としての分裂騒動

 この新雑誌創刊の前段として『WiLL』の分裂騒動があった。

『WiLL』(左)と創刊された『月刊Hanada』『WiLL』(左)と創刊された『月刊Hanada』
 すでにいくつかのメディアが取り上げているのでご存知の方も多いと思うが、いま書店に行くと『WiLL』と『月刊Hanada』が並んで平積みになっている。

 A5判の同型で、赤く縁取られた表紙の左上に白抜きの雑誌名、その下に記事タイトルと筆者名がズラリと並ぶ。デザインもほとんど同じだ(写真)。 

 これについては「WiLL」編集部(ワック側)がツイッターで、

 〈明日26日発売の『WiLL』6月号の類似商品が一部書店様で販売されるようです。献本をご覧になられた方からも、恥も外聞もない前代未聞の行いについて常識を疑う声ばかりです。このような読者を愚弄する行為には厳しく対処いたします。〉(4月25日)

 とアナウンスしていることからお分かりのとおり、揉め事になっている。

 ワック側の主張の詳細は同社のサイトを見ていただくとして、ツイッターのつぶやきをもう少し拾ってみると――。

 〈【お知らせ】週刊誌の報道でもありました、『WiLL』の前編集長花田氏が移籍先の飛鳥新社にて「NEW WiLL」なる誌名で新雑誌を創刊するとのこと。これに対して弊社では不正競争防止法に基づき東京地裁に『WiLL』の名称使用を差し止める申し立てを行っております。〉

 〈花田氏が新雑誌を刊行することに、なんら異議申し立てはしておりません。私どもの雑誌『WiLL』を模した「NEW WiLL」なる雑誌は読者に誤解を与えるだけでなく、花田氏の出版人としての見識を疑われる行為をお止めくださいますようお願い申し上げる次第です。〉

 そうして花田さんは、ワックの取締役であるにもかかわらず、競合会社へ移籍して競合誌を発行するのは〈取締役の競業避止義務並びに善管注意義務及び忠実義務に違反する行為〉(同社サイトより)だという理由で、取締役を解任された。

感情的な対立?

 これに対して、花田さんはブログやインターネットテレビで反論する。ブログはなぜか現在削除されて読めないが、月刊『創』5・6月合併号(創出版)などに花田さん側から見た経緯が詳しく載っている。

 花田さんの言い分は、

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