真偽の彼方に?
2016年06月13日
青木るえか「佐村河内さんたちと小保方さんを一緒にするな」(WEBRONZA)
青木るえか「佐村河内守さん事件、最初は笑ったが、だんだん胸が痛くなり……」(WEBRONZA)
中川右介「『時代錯誤』の作曲家・佐村河内守――ハンディキャップ・クラシックと『感動の美談』」(WEBRONZA)
福嶋聡「すべては佐村河内守と森達也の『FAKE』なのか――最後まで疑いを捨てられないドキュメンタリーの醍醐味(WEBRONZA)
藤崎康「佐村河内事件再考、および森達也『FAKE』について(上)――われらの欲望が生んだ偽ベートーヴェン」(WEBRONZA)
『FAKE』の森達也は、『A』『A2』で オウム真理教(当時)を取材・撮影した時と同じく、騒動後の佐村河内守に、独自のアングルで迫る。
それは、前回触れたような、佐村河内を「現代のベートーヴェン」と持ち上げたのち、一転「詐欺師」として弾劾したマスメディアの報道姿勢とは、まったく異なる立ち位置である。
佐村河内が“フェイク/偽者”であるという判断を、いったん宙吊りにし、あらゆる先入観ないしは二分法を遠ざけつつ、ニュートラル/中立的な態度で彼と言葉を交わし、彼の日常を記録するかのように。
森は佐村河内と彼の手話通訳者でもある妻を介して問答をする傍ら、ベランダに出て2人いっしょに煙草を吸い、妻ともあれこれ会話をする。
カメラはまた、取材の申し込みに訪れるメディア関係者たち、ことの真偽を取材に来る外国人ジャーナリストなどの姿を写すが、とりわけテレビマン4人組が醜悪に見える瞬間を、はからずも(?)キャッチする。
佐村河内はといえば、おそらく自分を擁護するかのような親密さで接してくる森のスタンスゆえに、われわれがメディアの報道や神山典士らの本で知らされていたのとは大いに異なる、数々の「証言」を披歴する。
そしてラストでは、「衝撃の12分」が映し出される(見てのお楽しみ)――。
とはいえしかし、『FAKE』を見終わると、さまざまな疑問が浮かぶのも事実だ。
たとえば、
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