岡崎体育、マキタスポーツ、秋山竜次……
2016年06月22日
岡崎体育。風変わりな名前だが、2016年5月にメジャーデビューしたばかりのミュージシャンだ。
いま、彼のミュージックビデオが話題を呼んでいる。その名も『MUSIC VIDEO』。これまた風変わりなタイトルだが、ご覧いただけばわかるように、ミュージックビデオにありがちな演出をそのまま歌と映像にしたものである。
つまり、“ミュージックビデオあるある”集が楽曲になっているのだ。
「あるあるネタ」は、笑いの分野でもいまやおなじみだ。「あるある」という表現とともに定着し始めたのは、1990年代に入ってからだろうか。
つぶやきシロー、ふかわりょうといった芸人がそれでブレイクした。2000年代以降もテツandトモ、レイザーラモンRGなどが活躍している。
一言で言えば、「あるあるネタ」は共感の笑いだ。ふだん目にはしているが何となくやり過ごしてしまっていることを芸人ならではの観察眼で切り取り、提示する。それが私たちの似たような経験についての記憶を刺激し、思わず「あるある」とうなずきながら笑ってしまう。
そんな「あるあるネタ」の幅も、時代とともに広がっている。今回、この岡崎体育のミュージックビデオを見て思い出したのは、マキタスポーツの音楽ネタだ。
ミュージシャンでもあるマキタは、さまざまな音楽ネタを得意としている。
そのなかのひとつに「ヒット曲の法則」を分析し、それをもとに作ったオリジナル楽曲がある。2011年にリリースされた『十年目のプロポーズ』(※スチャダラパーをフィーチャーしたバージョン)がそれで、彼が主張するヒット曲4つの法則(カノンコードの使用、「翼」「扉」「キセキ」「桜」のキーワードを盛り込んだ歌詞など)に忠実に作られたこの楽曲は、テレビでも紹介され、配信チャートでも上位に食い込んだ。
これは、流行歌そのものについての「あるある」と言えるだろう。しかも、一部分だけ取り出すような定番的なものではなく、楽曲という作品で表現したという点であまり類を見ない。
この連載の前回でオリエンタルラジオが中心となったユニット・RADIOFISHの『PERFECT HUMAN』についてもふれたが、ここでも笑いと音楽の境界線がとてもあいまいになっている。
[14]ネット的な笑いの時代は来るのか――『PERFECT HUMAN』がウケた理由
考えてみれば、「あるあるネタ」は
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