人々のイライラが渦巻く役所やスーパーで……
2016年06月27日
フランスでマタニティーマークは必要ない(上)――妊婦さんも「主張してなんぼ」のお国柄
マタニティーマークについて語る時、日本ではもっぱら公共機関における「席譲り」の件が問題になっている。
だが日本とフランスでは、そもそも妊婦さんが最も辛い思いをしやすい場所にはズレがあると思う。
例えばパリの地下鉄で最もメジャーな1番線。シャンゼリゼ大通りやルーヴル美術館、バスティーユなどを通りながら、パリと近郊を突っ切って東西に長く伸びている。
観光客も乗ってくるし混むには混むが、人気駅が広い範囲に散在しているので、全体で見れば混雑の波が寄せたり引いたりする感じか。
フランスで妊婦さんが辛い思いをするナンバーワンの場所は、おそらく地下鉄ではない。むしろ役所とかスーパーだと思うのだ。
まず役所関係の機関だが、これは本当に悪評が高い。根本的にシステムに欠陥がある気がするのだが、多くの自治体で長蛇の列が当たり前状態になっている。
大型スーパーも、これまたうんざりするほどの長蛇の列ができる。日本は日曜も開いているし、最近は24時間営業の大型スーパーもあるし、コンビニもある。フランスは営業時間が限られているから、特に夕方は買い物ラッシュとなりがちだ。日本の場合は役所もスーパーも、妊婦さんが困るほどの長蛇の列は、それほどできないのではないか。
だからフランスでは役所やスーパーで、それなりの対策がされていた。
例えば、公的機関のCAF(家族手当金庫)は、妊婦や障害者が役所や交通機関などで優先的に扱ってもらえる「La Carte familiale(家族カード)」を希望者に発行している。だがこの証明書は存在を知らない人の方が多く、かなりマイナーな存在である。
私も今回調べて初めてその存在に気がついたくらいで、周りで知っている人も、使っている人も見たことがない。
結局フランスでは、周囲に声をかければ妊婦さんは優先的に用事を済ませられるから、一般に証明書が必要とまでは思われていないようだ。またスーパーでは妊婦や障害者の絵が入った優先レジを用意している場合もあり、それで助かっている妊婦さんも多そうである。
では妊婦さんは普段全く不満を感じないのかというと、そういうわけではない。
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