林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
フランスの家族政策にヒントがある
フランスでマタニティーマークは必要ない(上)――妊婦さんも「主張してなんぼ」のお国柄
フランスでマタニティーマークは必要ない(中)――人々のイライラが渦巻く役所やスーパーで……
今回は少子化を克服したフランスの家族政策からヒントがないものか、かなり我田引水的に引きつけて考えてみたい。
なぜ日本の妊婦さんはマタニティーマークを外すほど、妊娠していることに堂々とできないのだろう。それは現在の日本に、妊婦さんを「萎縮」させる他者の視線があるからではないか。
その原因はいろいろあると思うが、ひとつには、「産みたいのに産めない女性」の視線があるのではと想像する。
日本では女性の社会進出に伴い、働く女性が仕事に没頭するうちに、出産適齢期を逃してしまう例が多い。たとえようやくパートナーと出会い妊活を始めても、年を重ねれば妊娠が難しくなるという自然の摂理にぶち当たる。そういう人にとって街で妊婦さんを見ることが、時に辛い経験になるのは理解できる。
厚生労働省によると、2014年の初産年齢の平均は30.6歳だった。それがフランスは約28歳(フランス国立統計経済研究所、2013年)。日本の方がフランスより2歳ほど遅いが、両国とも年々出産年齢が高くなる傾向がある。
だがはっきりと違うのは、産みたい女性や子育て中の女性に対する政府の積極的なフォローだろう。
よく指摘されることだが、フランスは政府によるしっかりとした家族政策によって、少子化を克服することができた。1995年には合計特殊出生率が1.66まで落ち込んだが、昨今は2.0前後で安定している。フランスは主に家族政策を通し、あの手この手で少子化に歯止めをかけてきたが、なかでも日本から見ると画期的と言えそうなのが、「産みたいのに産めない女性」へのフォローではないか。
フランスでは人工授精などの不妊治療は、疾患のための治療という扱いで許可される医療行為である。
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