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必見! ジャ『山河ノスタルジア』(上)

喪失感としての郷愁

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 中国を代表する映画作家、ジャ・ジャンクーの『山河ノスタルジア』に魅せられた。画面にみなぎる力、人物たちの<情>を表す卓越した描法、そして胸に迫る歌/音楽/ダンス……どれをとっても文句なしの名作だ。

「山河ノスタルジア」 〓Bandai Visual, Bitters End, Office Kitano拡大『山河ノスタルジア』」 (c)Bandai Visual, Bitters End, Office Kitano
 しかし未見の人に、物語やテーマを要約して紹介しただけでは、この映画の魅力は伝わらない気がする。なにしろジャ・ジャンクー監督自身が、「あらすじだけを読むと、つまらなそうですよね」と、(笑いながら)語っているのだ。

 とはいえ彼は、「昔は世俗的な話に興味がなかったが、今はありきたりな物語をどう撮るかが大事だと思えるようになった」とも述べる(2016年4月15日・朝日新聞・夕刊)。

 このジャの発言は、きわめて重要だ。本欄で何度も言っているが、映画の生命線は、物語の内容以上に、物語を<いかに描くか・撮るか・演出するか>にあり、また優れた映画的表現こそは、物語自体にも生命を吹きこむものだからだ。

ノスタルジア/郷愁/喪失感の対象

 この点をふまえて、『山河ノスタルジア』の「ありきたりな」物語や主題、およびジャの制作意図などをざっと述べたのち、本作における演出や撮影の妙技に触れたい。 ・・・ログインして読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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