強姦罪・強制わいせつ罪の「非親告罪化」と法定刑の引き上げを考える
2016年07月29日
性犯罪の厳罰化に向けた刑法改正の議論が、昨年(2015年)秋から法制審議会で行われてきた。6月16日にまとまった性犯罪部会の答申案によれば、強姦罪や強制わいせつ罪は被害者の告訴が不要な「非親告罪」となり、強姦罪は「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に法定刑が引き上げられる。
かつては、性的虐待を受けた子どもは決まって性的な事柄を忌み嫌い、「臆病」になるように思われてきたが、最近では、かえって積極的になる「性化行動」を取ることで何度も性被害に遭ったり、時には加害者となってしまうことが広く知られるようになってきた。性的虐待が与える子どもへの影響は計り知れないと改めて思う。
当然ながら、刑法改正の議論は被害者の救済を第一に考えて行われるべきだ。改正によって、性交に限られてきた強姦罪の対象行為が「性交に類似する行為」に広がることで、これまで見逃されてきた男児の救済につながれば幸いだ。
一方で、「監護者による罪」の新設については今のところ、親による虐待のほかに、どのようなケースが当てはまるのかわかりにくい。仮に事件化されるケースが増えたところで、果たして被害を受けた子どもを支援する受け皿が十分にあるのか不安になる。私が知る限り、子どもや女性を支援する団体は、複雑な要因がからまり合った案件をいくつも抱え、今でも手いっぱいの状態だ。
私は2009年に『欲望のゆくえ――子どもを性の対象とする人たち』という本を出したことが縁で、複数の性犯罪者と話し、文通し、裁判の傍聴にも通い、加害者の社会復帰や、加害者と被害者の「断絶」について考えてきた。目の前にいるこの人が、いったい何のために、本当にそんなむごいことを行ったのかと理解に苦しむ蛮行の数々に立ちすくみ、怒りといらだちを覚えたことも何度となくある。
そんな経験から、刑法改正によって「非親告罪化」や法定刑の引き上げが実現すれば、裁判や、加害者と被害者のあり方にどう影響するのか、非常に気になった。
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