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『FAKE』でわかった佐村河内守さんの「人徳」

「衝撃のラスト12分間」を見るまではヒヤヒヤしたけれど……

青木るえか エッセイスト

 話題のノンフィクション映画『FAKE』がやっと私の住んでいる福岡でも封切られたので見に行った。あの、佐村河内守さんに密着した映画。初日に。

 初日に行くという、このやる気は、ひとえに、「誰にも言わないでください、衝撃のラスト12分間」と煽りまくっていた、そのネタバレをするためだ。もちろん、当欄の、有料域になる前にどなたでも読める部分でその12分に何があったのか書こうと思っていた。

佐村河内守拡大佐村河内守さんが「現代のベートーヴェン」と言われていたころ=2013年
 ネタバレということに関して、かねて言いたいことがある。

 公開前の作品のオチを他人が勝手にばらしたらダメだろうし、あと試写会の段階でばらすなというのもまあガマンするとして、もうそのへんの映画館でやってて誰でも見られる映画のネタをばらすなってどういうことだ。

 ばらすなって言ってもいいけど、そんな勝手な言い草に誰が従うよ、と思ってたら唯々諾々と「ここからはネタバレ禁止なので」とかいって口をつぐむ羊どもはいったい何なんだ。

 この『FAKE』も、衝撃の12分に何があったのか、ネットを検索してみたが、そこに言及しているものは多数あるけれど「あの“衝撃のラスト12分”は考えさせられました」とかいうやつばっかで、「その12分に何があったんだか書けよ!」とモニターに向かって怒鳴った。思わず。

 ということで、ネタバレをこれから行います。

「衝撃の12分」を見終わったあとの「衝撃」

 が。映画が終わった時、私は「これはネットに、ラスト12分の内容が書かれなかった理由がわかった気がした」のであった。というよりも、終わった時にぽかんとした。

 私には、衝撃の12分とやらの、衝撃がどこにあるのかぜんぜんわからなかったからだ。

 この映画、早めにエンドロールが流れて、そのあとまだ少し映画が続く。12分というのはエンドロールをまたいだ分量で、エンドロールが来た時に「えええ? これで終わり????」とびっくりして、しかしエンドロール後にまだ続いたので「きっとここからすごいやつが!」と身構えていたら、同じような調子のまま本当に終わってしまった。えええーっ???

 佐村河内さんは、耳が聞こえない作曲家として売り出していたけれど、「作曲を他人にやらせて自分のものにしてた」「耳が聞こえないのはフカシで、ちゃんと聞こえてる」という暴露記事が出て、それぞれに佐村河内さんとしては言い分はあるのだけれど、報道以降「作曲もできないインチキ男」ということに、世間では確定してしまった。

 外国人記者が佐村河内さんを訪問していろいろ核心に迫る質問を繰り出す(ここは「12分」部分ではない)。佐村河内さんが新垣隆さんに渡したという細かい作曲の指定書を見せても、「うーん、細かく書いてるのはわかるんだけどこれだけじゃここに音楽の実態があったかどうかがわかんないんだよね、この家にキーボードのひとつもないし、鼻歌程度であっても曲の断片の録音でもあればあなたが作曲するということがわかるんだけどねえ(大意)」と言われて黙ってしまう。

 私は佐村河内ファンなのだが、ここは外国人記者の言い分ももっとも。

 たぶん、この外国人記者の質問が佐村河内さんもひっかかっていた、そこで……と、たぶんここからが「衝撃のラスト12分」だろう。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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