鉄道投資で働きやすく子育てしやすい都市の実現を
2016年09月01日
前回に引き続き、満員電車対策について論じて行きたいと思います。
小池都知事に進言したい4つの満員電車対策(上)――選挙公約の「満員電車ゼロ」案を検証する
前回は、新しく都知事になった小池氏が掲げた2つの満員電車対策(時間差通勤と2階建て化)について言及し、時間差料金というソフト面の提案をしましたが、対策の本丸はやはりハード面であり、複々線化、新しい路線の建設、編成数の増加という、3つのインフラ整備でしょう。
たとえば小田急電鉄は、東北沢~和泉多摩川間で進めている複々線化が完了すると、2018年のダイヤ改正で運転本数を3割増やすことが可能になり、混雑率が189%から一気に160%程度に激減すると算出しています。
また、2015年3月に東京上野ラインが開通したことで、山手線と京浜東北線だけだった上野~東京間は、実質「複々々線」となりました。それにより、混雑率199%のワースト2と197%のワースト4だった両線は、ワースト10のランク外になり、効果が如実に現れています。
次に複々線化が予定されているのは、都心で最も混雑によるノロノロ運転を強いられている京王線(笹塚駅~つつじヶ丘駅間)で、4年前に東京都により都市計画の決定・告示がされました。今年の4月に16年ぶりに策定された「交通政策審議会答申」では、上記の他に東急田園都市線やJR中央線の複々線化も記載されています。
採算が危ぶまれる郊外路線の延伸よりも、複々線化の案には高いB/C(費用便益比)が算出されているものも多く、確実に混雑率の低下という成果が得られるため、それを加速してしっかりと進めて行くべきでしょう。
その一方で、道路族の利害が絡んでいたと指摘されてきた立体交差化(高架化)は、自治体が事業主体になって進められるような仕組みになっているのと比べて、複々線化は行政の支援が十分とは言い切れず、自ら事業主体となる鉄道会社がリスクを気にして整備に及び腰になっているという面もあります。
また、複々線化の効果はその地域に限らず沿線全体に及ぶために、工事の地点と受益者発生の地点にズレが生じており、複々線化される自治体の熱が弱いという面もあります。
ですが、これは明らかに制度の不備であり、道路の混雑が緩和されて電車の中の混雑は変わらないというのはアンフェアだと思いますので、複々線化に関しても是非国が全体の制度設計を見直して、立体交差化と同様に進められるような状況に持って行くべきでしょう。
たとえば、
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