勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
痴漢問題の連載第2回目の今回は、痴漢がいかに社会の課題として扱われていないかについて見て行きたいと思います。
第1回でも触れましたが、痴漢の被害を訴えても「女として見られたってことじゃん!」と、犯罪に遭うことが名誉であるように捉える人は少なくありません。
高畑裕太逮捕で噴出する6つのセカンドレイプ――性暴力について何を言ったらいけないのか?
ですが、たとえば強盗に遭った被害者に対して、「お金持ちって見られたってことじゃん!」「それ、自分がお金持ちという自慢?」と返答するでしょうか?
痴漢の被害者は圧倒的に女性ですが、性別に関係無く起こりうる犯罪に入れ替えてみれば、被害を名誉のように捉えることがどれだけ間違っていてどれだけ被害者を攻撃していることになるか、よく分かるはずです。
また、以前、クイズバラエティー番組「ネプリーグ」で痴漢被害の遭遇者率をクイズにしたことで炎上したことがありましたが、「暴行事件の被害遭遇者率」や「振り込め詐欺の被害遭遇者率」をクイズにするでしょうか? 痴漢という犯罪を娯楽のネタとしてしまうことは、意識の低さを如実に物語っていると言えるでしょう。
さらに、裁判所までもが「(14歳の女子に対する痴漢行為の)悪質性は比較的低い」と判決で言い渡した事例(2015年12月)もあります。これは痴漢行為をして解雇された男性駅員が不当解雇だとして東京メトロを逆に訴えた事例ですが、東京メトロ人事部の判断をあろうことか東京地裁が覆してしまう判決となりました。高裁や最高裁で判決が覆ることを祈るばかりです。
痴漢そのものが社会悪だという認識が社会に全然広がっていないと感じる点は他にいくつもあります。その代表は、痴漢で男性が捕まることに対して、「そんな(しょうもない)ことで人生を棒に振るなんて情けない」と表現されることです。
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