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 これまで痴漢の社会的背景について見てきましたが、痴漢のケースになると、頻繁にとある法律用語を見聞きする機会が多くなります。それは「冤罪」です。

 もちろん冤罪問題はどの犯罪にもつきものですが、他の犯罪について話している際に、痴漢事件ほど冤罪という言葉が頻出することはありません。この言葉が、もはや「痴漢とセットになって出てくる言葉」のようになっている現状はおかしいと感じます。

 また、痴漢がニュースになった時はあまり騒がれないのにもかかわらず、痴漢冤罪が起きた時や、冤罪の懸念がある場合の対策が報じられた時にだけ過剰に騒ぐ人たちも少なくないように思います。

「さわらないで!」と書かれたシール(右)の1枚目をめくると、下から赤い「×」印が現れる拡大「さわらないで!」と書かれたシール(右)の1枚目をめくると、下から赤い「×」印が現れる「チカン抑止シール」。これを自分のスマホに貼って痴漢に見せるなどする
 たとえば、2015年2月に埼玉県警が「さわらないで!」と書かれた「チカン抑止シール」を作り、ネットでも議論になりました。 

 痴漢に証拠の目印を簡単に貼りつけて立件しやすくするためのツールとのことで、その効果に疑問を持つのは当然としても、「冤罪のケースを助長しないか」という話ばかりする男性が多かったことを記憶しています。

 この時は、犯罪をどう減らすかより、男性という自分の立場をどう守るかということばかり考えている人たちがたくさんいることを実感し、頭が痛くなってしまいました。

 痴漢問題で冤罪の話ばかりを言う人たちの視点は自分目線の一人称に帰結されていて、痴漢被害という現象そのものを論じているわけではありません。「社会的正義」の視点ではなく、「利害」の視点でしか問題を見ていないのです。痴漢問題への厳格な対処が進まないのには、このような背景もあると言って良いでしょう。

痴漢冤罪を撲滅するには

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筆者

勝部元気

勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家

1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら

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