スカッとする「感動ポルノ」批判の先へ
2016年09月23日
全身グリーンの河童がこちらを見ている。コメンテーターが話している背後に横たわった河童が映っているのだ。ニコニコしたり、うなずいたり、表情でアピールしている。鮮やかなグリーンが不気味だが、愛嬌がある。気になる。だれがいつ突っ込むんだろう。司会の山本シュウは最後まで、フルリクライニング車椅子に寝て出演していた河童にひと言も触れなかった。
8月28日日曜日、年に一度の全国的チャリティ番組『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)に「ぶつける」形でNHK・Eテレの『みんなのためのバリアフリー・バラエティ』(バリバラ)が「笑いは地球を救う 検証!「障害者」×「感動」の方程式」と題した番組を生で放映し、話題を呼んでいる。
実におもしろく刺激的だったが、私が一番驚いたのは、グリーンの河童に扮した「お笑い芸人界で初の寝たきり障害者」を自称するあそどっぐの扱いだった。
議論に熱中しながらも、途中で「これ、最後まであそどっぐを放置するつもりなのか。もしかしてそうなのか……」と気づいてから、番組最後までどきどきしながら観ていた。画面の下に流れる視聴者からのツイートでも、「カッパが気になる……」という言葉が流れていた。
そしてエンディング。笑いに包みながらも大きな問題提起をした生放送は、先述のごとく河童の存在をスルーしたまま華々しく終わった。私は大笑いした。
「寝たきり状態」の障害者が出演しているのに、無視したまま終わるテレビ番組があり得るだろうか。その壁を、きっと出演者全員がおなかの中で笑いながら、ひょいと超えたのだろう。
以前からあそどっぐをはじめとして、障害を持つお笑い芸人の活躍が気になっていたが、障害者に関わる笑いの幅が広がりつつあることにやや興奮した。
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