勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
これまで5回にわたって、痴漢を取り巻く現状を浮き彫りにしてきました。では、今後どのような対策を進めれば良いのでしょうか?
私は大きく分けて3つの柱があると思います。それは、1.厳罰化、2.加害者や二次加害者にならないような教育の徹底および加害者になる危険性の高い人の「治療」、3.インフラ整備です。そのうち今回はまずインフラ整備についていくつか提案をしていこうと思います。
痴漢対策のためのインフラ整備でその核となるのが、やはり監視カメラの設置です。
近年、街中のいたるところで監視カメラを見かけるようになりましたが、2016年上半期(1~6月)の全国の刑法犯認知件数(暫定値)は、42年ぶりに戦後最少となった2015年の1年間(109万8969件)を下回るペースで推移しており、警察庁の担当者も「監視カメラによる効果が大きい」と証言しています。
実際に、2009年に先行して防犯カメラが導入された埼京線の一部車両では、設置前と設置後で6割も発生件数が減少したとの報告も出ており、効果は絶大と言えるでしょう。
その後、2010年に京王線で2編成に導入され、2011年3月には警察庁が鉄道各社に対して、「女性専用車両」の拡大や防犯カメラの設置を申し入れました。
このように毎年何かの動きがあったのでこのまま機運が盛り上がるかと思いましたが、残念ながらその後は導入の気配は無く、一時沈黙の時代を迎えます。6割も発生件数が減少した路線があるにもかかわらず、なぜ全車両に導入しようという動きが出てこないのかとても疑問です。