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トランプは性の「神話」の中で生きている(下)

私たちも「トランプ」になりうる――男性にとっての教訓

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

「神話」を生み出す要因――アダルト映像

 前回書いたような、トランプにまつわる不快な事実を、私たち(特に男性)はどう考えるべきなのか。

トランプは性の「神話」の中で生きている(上)――女性のセクシュアリティについての誤解

 私は、圧倒的多数の男性はトランプのような姿勢とは無関係だと信ずる。だが、今日の男権制社会で生まれ成長したふつうの男性は、油断の瞬間には、予期せずしてトランプになりうることを知っておくべきだと思う。今回騒ぎとなっている事実は、遠い国の縁遠い大統領候補の話ではなく、私たちの身近でも常に起こりうる問題である。さほどに男性の周囲には、トランプのような行動へと男性をそそのかす条件が多い。

トランプのような行動は男性誰もがとりうるかもしれない拡大男性がトランプから得られる教訓は――
 しばしば男性同士の間で伝えられる俗言が、ありもしない「神話」を事実と信じる傾向を増幅させている可能性はある。「女には、『いや』も『よい』である」などという俗言は、その筆頭だろう。

 だが私は、男性をそそのかす条件の筆頭は「アダルト映像」であると考える。1999年にNHK「『日本人の性』プロジェクト」が行った大規模な調査からも、それは十分に推測できる。この調査では、非常に多くの男性が、年代と関係なくアダルト映像から性的な知識を得ている事実が浮き彫りになった。

 正確に言えば、この調査(アンケート調査)では選択肢の中にインターネットが入っていなかった。だがその後インターネットは爆発的に普及し、もはや今日これと無縁に生きることは不可能なほどである。そしてネットには、性的な情報があふれている。それまで場末のビデオショップでしか手に入らなかったアダルト映像に、いまはネットでいとも簡単に接触できるようになっている。

 しかもその接触可能な量たるや、尋常ではない。かつては一つのアダルトビデオ・DVDを借り出すだけで、それなりの費用や面倒がかかったものだが、いまやパソコンをもちネットにつなぐことさえできれば、事実上、特別な経費をかけずに、家にいながら、無制限にアダルト映像に接触できる。

 要するに、1999年に同上調査結果が示した以上に(いや、はるか以上に)、男性のアダルト映像への接触の機会は増している。NHK調査で同じく大きな性情報源とされた「アダルト雑誌」も、いまはほとんどアダルトDVDを付録につけている。その限り、アダルト映像と無関係に男性のセクシュアリティを考えることは、もはやできない。

アダルト映像が醸成する神話

 では、そのアダルト映像とはどのようなものか。

 それは、(1)女性をあくまで性的関心からのみ見るよう、男性をそそのかす。しかもそれは、(2)これまで記したような、女性、そのセクシュアリティ、セックス等に関する「神話」を、視聴者たる男性に与えてやまない。

 私は以前、アダルト映像を時間をかけて調べた ・・・ログインして読む
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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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