これでシーズンオフも、かーちかーち、かっちかち
2016年11月02日
どうも、クーリエ・ジャポンというウェブ雑誌の編集長をしている井上威朗と申します。1人で球場に行き、広島カープをぼんやり応援する「ぼっちカープおじさん」でございます。
夏にこちらの記事(「ぼっち観戦20余年、『カープおじさん』の喜び――ガラガラだった神宮球場を思い出しつつ……」)を書いたとき、仕事しないで秋に球場へ通いすぎて社会人的に大変なことになるだろうと予測していましたら、特にそうはなりませんでした。
札幌ドームであざやかな大連敗を堪能した3日間も、ほかにやることもないので、球場にいるとき以外はパソコンを開いて仕事していました。ウェブ雑誌って便利ですね。
実際、広島へ野球を観に行ったついでに何となく買ってしまった赤い感じの本が自宅に蓄積されています。この機会に、2016年の9月および10月に出た企画をガンガン読んで、おすすめできそうなものを敬称略にて紹介することといたしましょう。
まずは似たような表紙が並ぶムック。便乗企画がズラリ、といいたくなりますが、よく見てみると、意外とみんなタイトル通りの内容です。編集者の誠実な仕事ぶりが分かり、ご同慶の至りという気持ちになります。
たとえば『カープ 25年の軌跡』(宝島社)。たっぷりの写真や図表を盛り込んで、この25年を分かりやすく追跡した企画です。その25年目である今年の部分は特に丁寧に、多くの選手の過去と現在を解説しています。
さらに25年以上前、球団創設からの歴史も網羅。1975年の初優勝時に監督であった古葉竹識、ミスター赤ヘル・山本浩二のインタビューもあります(ただし、それほど新しい逸話はありません)。現在の選手のインタビューは、二塁手の菊池涼介のみ。
本書は丹精込めて作られた記録集、と考えるべきでしょう。
『広島東洋カープ 25年ぶりセ界一!』(洋泉社)も、インタビューに登場するのは古葉竹識、黄金期の抑えのエース江夏豊、暗黒期のエース佐々岡真司、といった方々で、現在の選手についてはライターのまとめた短い評伝や分析記事、という作り。
やはりタイトル通り、「25年ぶり」がなぜ実現したのか、という問いに答えることを目的とした本といえます。
ライターは前出の宝島社ムックと重なる人も多く、よくいえば安定した、悪くいえば既視感のある原稿がみられます。とはいえ、中国放送(RCC)の坂上俊次アナウンサーが取材した生ネタ豊富なコラムなど、読みどころも多いです。
ちなみに、同じ出版社が春に出した『広島東洋カープ読本2016』には選手はじめ多くのインタビューが満載。2冊セットで読む人のことを考え、企画の使い回しをしない誠実さを評価してもいい気がします。
逆に「使い回し上等」で保存版となっている企画もあります。定期刊行物の「増刊号」扱いのものですね。いつも当該メディアを読んでいる人にとっては損した気にもなりますが、おいしいところをまとめて読める、というのはありがたい話です。
各媒体が『広島東洋カープ優勝記念号』と銘打ったものを出しているのですが、みな1000円程度、場合によっては数百円でけっこうな読みごたえ。入門者にはおすすめできます。
ですが、いつもカープのニュースを読みあさっている身としては、それほど新しいネタが読めるわけでもありません。だったら同じ再録企画でも「もっと濃いのをください!」と思ってしまいます。
ということで「濃厚派」の筆頭が
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