東急のマナー広告が物議を醸した理由
2016年11月25日
電車内で化粧をする女性を「みっともない」として批判的に描いた「わたしの東急線通学日記」という東急電鉄のマナー向上動画広告が、ネット上で大きな波紋を呼びました。
電車内の化粧という行為に対する是非というテーマは古くから賛否が別れる問題です。
朝日新聞では1986年に「たしなみを忘れた若い女性にひと言」という投書が投稿されているほどですが、今回のケースに関しても、インターネット上では様々な意見が噴出していました。
一連の騒動を整理してみると、東急の広告に対して批判の声があがった理由としては、電車内の化粧がマナー違反か否か自体が論点になったというよりも、東急の広告自体に、主に2つの問題点があったからと思われます。
まずは、マナー違反とした理由が「みっともない」からだったためです。
たとえば、電車内でイヤホンから音漏れをするほどの音量で音楽を聴く行為は、受け手に具体的な危害が発生する迷惑行為ですが、化粧という行為は基本的に具体的な危害は発生しません。
もちろん、手を動かすことで横に座っている人に肘がぶつかったり、飛散するような粉モノや匂いの強い化粧品を使用すれば、具体的な危害が発生する迷惑行為に該当するでしょう。東急の広告もそのような理由で注意を促したのであれば、まだ合理性はあったと言えます。
ところが、この広告に出ている女性は隣に誰もいませんし、荷物を膝の上に乗せて、かつ飛散するような粉モノを使用しているわけではありませんでした。「女性としてあるべき姿から外れているみっともない行為だから問題である」と断罪したために、「女性としてあるべき姿を理由に他人を批判するべきではない!」と反発を招いたのです。
電車内における化粧に限らず、女性は男社会によって作り上げられた「あるべき理想の女性像」から外れることに対して、「みっともない」という理由で様々な抑圧を受けており、その理不尽さに業を煮やしている人は少なくありません。それゆえ、今回の広告に対して、化粧を人前ですることをあまり良いこととは思っていない女性も広告に対して反発したのです。
東急の広告が物議を醸し出したもう一つのポイントは、
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