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車内化粧とコンビニおでんの卵と「規範」

「好きでも1個」と書いたナンシー関さんの不在

矢部万紀子 コラムニスト

 ナンシー関さんが亡くなった後、寂しくて、大量のナンシー本を買って読んだ。ひとつ、心に残って、折に触れ思い出す文章がある。

 「コンビニでおでんを買うとき、卵は1個なら1個。いくら好きでも、それを守る●●」

 そんな文章だった。原典に当たれば正確にわかるのだが、私の中では、前半部分が腑に落ちていて、●●についてはなんとなく、「矜持」だったか、「節操」だったか、「気概」だったか、もっと柔らかな言葉だったか。そんなぐらいで、定着させている。

 とにかく、時々、「卵は1個なら1個」と確認している私がいる。

噛み合わない賛成派と否定派

 ここで、電車の中で化粧をするかしないか問題だ。

 東急電鉄のマナー広告「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ。」が賛否両論を招いたことについて、私なりに考えたとき、ナンシーさんの「コンビニおでんの卵」に至った。つまり、そういうことだよな、と。

東急のマナー向上広告「わたしの東急線通学日記」の動画より拡大東急のマナー向上広告「わたしの東急線通学日記」の動画より
 「化粧をして、誰かに迷惑がかかるか」「酔っ払い、痴漢、スマホから漏れる大きな音etc. もっと迷惑なことは他にある」が「車内化粧=みっともない」否定派の主たる論拠で、そこから「女性への抑圧だ」などが派生し、「だったら男はヒゲ、そってやる」など「みっともない」賛成派からの応戦へと発展――両論を私なりにまとめるとこんな感じだ。

 確かに車内で化粧をされて、迷惑のかかる人はいない(粉などが飛んで喘息の人は困るかも、などきめ細かい「例外」を書いている人もネット上にはいたが)。

 だけど「車内化粧=みっともない」に「そうだ!」と賛成している人の大半は、「迷惑だから、ダメだ」と言っているわけではないと思う。

 だからこの「賛否」は、いずれにしろ噛み合わない。

 私は、車内化粧はダメと思っている。確かに迷惑はしていないが、ダメと思う。「ダメだーー!!」と叫ぶつもりはないが、車内化粧を見ると、「おやおや」とは思う。「こらこら」と思う時も多い。

迷惑はしてない。だけど…

 車内でいろいろなことをするのが“解禁”になったのは、いつのことだったろうか。私の中では、都営地下鉄の中で

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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