外国人のための新しいローマ字表記の提案
2016年11月29日
前回(上)で書いたようなことはまだ大した問題ではない。
ローマ字表記は東京五輪に向けて変えるべき(上)――現在のローマ字は日本語の特性を無視している
はるかに大きな問題は、長音と単音をどう区別するかである。国交省が扱うのは地名であり、かつ同音異義の地名はそう多くないため、特に問題を意識しなかったのであろうが、外国人観光客と日本人との意思疎通のためには、母音の長短への配慮は不可欠である。
日本語では長音と単音は「音素」として異なる。つまりこれの区別によって意味が変わってしまう。現行のローマ字表記ではそれが区別できない点が、最大の問題である。
東京を「とうきょう」と発音しても「ときょ」と発音する日本人はいない。「とうきょ」とも「ときょう」とも発音しない。
北海道には「大通り」という地名がよくあるが、「大通りに行きたい」と言うとき、「Odori」の2つの「o」が長音であることを外国人が知らなければ、日本人には「踊りに行きたい」と聞こえるだろう。
各地にある交番の入り口には「Koban」と記されているが、私には「小判」に見える。外国人に「こばん、どこ?」と聞かれて、意味が分かる日本人はまずいないだろうし、「こばーん」だったら絶望的であろう。
長音を記すためには、母音の上(いま上としておくが、後述する理由で下にも必要になる)に「‐」を記すのがよい。あるいは、欧米のものをありがたがる日本人にこれでは野暮ったく見えるなら、フランス語のアクサン・シルコンフレックス(ねじれアクセント)を借りて「^」と記してもよい。ただし、後述するように母音の下におく場合を考えれば、また書きやすさからも理解のしやすさからも、「‐」の方がよい。
つまり、大通りはŌdōri、交番はkōban、東京はTōkyōと記せば、外国人と日本人のコミュニケーションははるかに容易になる。
だが、これによってはまだ、日本語の一大特徴である音の高低が全く識別できない。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください