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【公演評】宙組『双頭の鷲』

専科・轟悠と宙組トップ娘役・実咲凜音の魂がぶつかりあう、コクトーの耽美な世界

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大宙組「双頭の鷲」公演から、スタニスラス役の轟悠(右)と王妃役の実咲凜音=岸隆子撮影
 宙組公演Musical『双頭の鷲』が、11月22日~12月3日、宝塚バウホールで上演されました(12月9日~15日、KAAT神奈川芸術劇場)。

――とあるヨーロッパの国で起こった王妃暗殺事件。人前では決して黒いベールをはずさなかった王妃が顔をあらわにし、クランツ城の階段で暗殺者と手を握り合い、ともに絶命していた。2人の間に一体、何があったのか……。

 ジャン・コクトー原作『双頭の鷲』は、ハプスブルク家の紋章を思い浮かべるように、エリザベート皇后が暗殺された事件をモチーフにしています。暗殺者でアナーキストの詩人スタニスラスを演じる轟悠さんは、貧しさに傷つき、権威への憤りにもがく青年を、重みを失うことなく若々しく演じ、実咲凜音さんはこの夏に演じたエリザベート役で培った経験を生かし、気品ある王妃を堂々と披露。学年差を超え、互いが一歩も引くことなく魂をぶつけあう演技は、見ごたえも抜群でした。

 一つの部屋の中だけで起こったわずか3日間の出来事はあまりにもドラマチックで、最後まで緊張感が途切れることはありません。憎しみ合うはずの2人が、互いの孤独に触れ、燃える恋に変わるまでの3日間を、宝塚らしい耽美な世界観で描きました。

度胸満点で物語を進行する和希が頼もしい

 物語はクランツ城で起こったセンセーショナルな王妃暗殺事件の現場から始まります。スキャンダルのにおいをかぎつけたパパラッチたちは興味津々。彼らは黒をベースにした衣装に身を包み、透ける壁の向こうで常に待機していて、場面ごとに夢の住人や臣下などにも姿を変え、多彩な演出の一翼を担っていました。

 ストーリーテラーを務めるのは和希そらさん。『エリザベート』新人公演のルキーニ役で観客を魅了したように、滑舌の良い語り口で物語を進行していく姿は度胸も満点です。お客様を“いじる”様子も余裕たっぷりで、まだ新公学年とは思えないほど頼もしい。伸びやかな歌とシャープなダンスが目を引く宙組きっての実力派は、強い存在感で舞台を引き締めていました。

拡大宙組「双頭の鷲」公演から、ストーリーテラー役の和希そら(中央)=岸隆子撮影
 そんな和希さん演じる案内人が、時を巻き戻したのは、事件の3日前。

 クランツ城の部屋は家具や装飾品、テーブルの上の果物まで何もかもが真っ白で、紗がかかったように透けるカーテンや壁もまるで氷の世界のように見え、孤独な王妃の心を表しているようです。

◆公演情報◆
宙組公演
Musical『双頭の鷲』
2016年11月22日(火)~12月3日(土) 宝塚バウホール
2016年12月9日(金)~12月15日(木) KAAT神奈川芸術劇場
[スタッフ]
原作:“L’AIGLE A DEUX TETES” by Jean COCTEAU
脚本・演出:植田 景子
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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