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[書評]『日本の聖域 ザ・タブー』

「選択」編集部 編

小林章夫 上智大学教授

年末に読むには刺激が強すぎるかも 

 知る人ぞ知る月刊雑誌『選択』。書店売りなし。毎月購読を頼むと、月初めに送られてくる。もちろん購読料はかかるが、購読者は3万人で結構だと啖呵を切る。雑誌に企業広告はほとんどなし。

 本書の前書きに当たる部分で編集長の湯浅次郎は、「いざとなったら広告ゼロでもやっていける経営状況を保つことで、制約のない誌面作りを実現して」いると、気持ちのいい言葉を吐く。まさにそれゆえか、歯に衣着せぬ誌面で読者の目と心をくぎ付けにする。

『日本の聖域 ザ・タブー』(「選択」編集部 編 新潮文庫) 定価:本体590円+税拡大『日本の聖域 ザ・タブー』(「選択」編集部 編 新潮文庫) 定価:本体590円+税
 本書は、雑誌『選択』に「日本の聖域(サンクチュアリ)」のタイトルで連載されたものを改題してまとめたもの。今まで2冊が出版されており、その3冊目。なお、文庫にするにあたっては大幅な加筆がされているから、ぜひこの文庫本を読むべきだろう。

 全体は3部に分けられているが、ともかくありとあらゆる話題に切り込んで痛快この上ない。

 現在話題の「自民党東京都連」はさっそく目を惹くところだが、「スポーツマフィア 電通」も忘れられないところ。ともかく新聞・テレビで報じられる薄っぺらなニュースを格段に上回る原稿が並ぶ。個人的には「私大と新聞の『異様な関係』」が身につまされた。

 これを読んで驚くのは、よくもまあこれだけ多彩なネタを取り上げて、きちんとしたデータをベースにしながら、読ませる記事を書けるものだという点。「科学研究費」のうさん臭さ、闇の部分をこれだけ剔抉(てっけつ)した記事は、それこそほかのメディアには見られないものだろう。

 「センテンス・スプリング」の活躍があるではないかと言う人がいるかもしれないが、問題の奥底にまで踏み込んでいく意気込みと、そこから出てくる驚くほどの事実には、誰しもが感心するはずである。この点で「文春さん」とは比べ物にならない。

 これで困るのは、ますます通常の新聞、雑誌に興味を持てなくなること。テレビはすでに見放したからいいけれど、ほかに読む新聞、雑誌を見つけようにも、それが難しくなる。書物もだんだん面白いものがなくなっているから、活字文化はやはり衰亡していくのだろうか。

 最後に一言。「解説」は本書で一番つまらない部分。

*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。

*「神保町の匠」のバックナンバーはこちらで。

三省堂書店×WEBRONZA  「神保町の匠」とは?
 年間8万点近く出る新刊のうち何を読めばいいのか。日々、本の街・神保町に出没し、会えば侃侃諤諤、飲めば喧々囂々。実際に本をつくり、書き、読んできた「匠」たちが、本文のみならず、装幀、まえがき、あとがきから、図版の入れ方、小見出しのつけ方までをチェック。面白い本、タメになる本、感動させる本、考えさせる本を毎週2冊紹介します。目利きがイチオシで推薦し、料理する、鮮度抜群の読書案内。

筆者

小林章夫

小林章夫(こばやし・あきお) 上智大学教授

上智大学英文学科教授。専攻は英文学だが、活字中毒なので何でも読む。ポルノも強い、酒も強い、身体も強い。でも女性には弱い。ラグビー大好き、西武ライオンズ大好き、トンカツ大好き。でも梅干しはダメ、牛乳もダメ。著書に『コーヒー・ハウス』(講談社学術文庫)、『おどる民 だます国』(千倉書房)など、訳書に『ご遺体』(イーヴリン・ウォー、光文社古典新訳文庫)ほか多数。