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[2016年 映画 ベスト5] アニメの年

『この世界の片隅に』の過激な思想

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1.『この世界の片隅に』(片渕須直監督)
2.『ジュリエッタ』(ペドロ・アルモドバル監督)
3.『キャロル』(トッド・ヘインズ監督)
4.『団地』(阪本順治監督)
5.『海よりもまだ深く』(是枝裕和監督)
次点:『山河ノスタルジア』(ジャ・ジャンクー)、『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド)、『ダゲレオタイプの女』(黒沢清)、『淵に立つ』(深田晃司)

未公開:『ノクトラマ/夜行少年たち』(ベルトラン・ボネロ)、『マ・ローザ』(ブリランテ・メンドーサ)、『去った女』(ラヴ・ディアス)、『鳥類学者』(ジョアン・ペドロ・ロドリゲス)、『ジャングルの掟』(アントナン・ペレジャトコ)、『垂直のままで』(アラン・ギロディ)、『夢が作られる森』『コンクール』(共にクレール・シモン)、『アルモリカ組曲』(パスカル・ブルトン)、『暗くなる時』(アノチャ・スウィチャコンポン)

 今年はパリで半年過ごしたので、邦画は少し自信がない。その分、パリなどで見た未公開作を10本書いた。

 日本を離れていても、今年がアニメの年だったことくらいわかる。アート系のアニメ監督だった新海誠が興収200億円を超した『君の名は。』を生み、『エヴァンゲリオン』の庵野秀明がその世界観の実写『シン・ゴジラ』で興収80億円を超し、『この世界の片隅に』で片渕須直が興行的には比較にならないが政治的にも映像的にもこの2作に対峙したからだ。

 現政権を擁護するような『シン・ゴジラ』と東日本大震災を無化するような『君の名は。』の大仕掛けのドラマに対して、『この世界の片隅に』は微細な日常の視点から「永続敗戦論」のアニメ版ともいうべき過激な思想を見せた。

 もちろん、『この世界の片隅に』が、巨匠アルモドバルやヘインズの傑作より優ると言うわけではない。しかし今年の日本のアニメの状況を考えて、あえて1位に置いた。ここに挙げた5本は日本に不在で試写しか見られなかった『団地』以外は2度見ているが、どれも2度目の方がさらに良かった。

『この世界の片隅に』と3・11後の世界

 『この世界の片隅に』がすばらしいのは、まず ・・・ログインして読む
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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