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【公演評】宙組『王妃の館』

朝夏まなとと宙組スターたちが奇想天外なコメディで強烈キャラクターに大変身

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大宙組『王妃の館』公演から、北白川右京役の朝夏まなと(右)と桜井玲子役の実咲凜音(中央)=岸隆子撮影

 宙組公演、ミュージカル・コメディ『王妃の館』、スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』が、2月3日、宝塚大劇場で初日を迎えました。「映像化は不可能」と言われた浅田次郎さんのベストセラー小説が、ロマンチックとコメディをミックスした宝塚らしいハートフルミュージカルへと大変身。トップスター朝夏まなとさんをはじめ、二枚目スターたちが強烈な個性のキャラクターにふんして、客席を爆笑と感動の渦に巻き込んでいます。

 今回は、歌・ダンス・演技の三拍子そろった実力で、朝夏さんを力強く支えてきたトップ娘役、実咲凜音さんのサヨナラ公演となりました。楽しいお芝居とエネルギッシュなショーが、明るく笑顔いっぱいに卒業を飾り、劇場は一足早くあたたかな春を迎えています。

 憧れのフランス「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の館)」に宿泊する、150万円の豪華ツアーと19万8000円の格安ツアーがダブルブッキング!? ツアーガイド・桜井玲子(実咲)が倒産寸前の会社を救うため考えたとんでもない企画に、事件が起こらないわけがない。

 豪華ツアーには、小説家と秘書、不動産王と元ホステス、ワケアリな庶民的夫婦。格安ツアーには、オカマと警官、元教師の老夫婦、黒ずくめの怪しげなカップルと、曲者たちが勢ぞろい。この顔ぶれを見ただけでトラブル必至! ワクワクせずにはいられません。

ナルシストで変人なのにカッコいい朝夏

拡大宙組『王妃の館』公演から、北白川右京役の朝夏まなと=岸隆子撮影
――17世紀に太陽王と呼ばれたルイ14世の館は、一見さんお断りの高級ホテルだが、実際は経営難に陥っていた。そこに目を付けた玲子(実咲)はホテルと結託し、「一部屋に」夜には高額の“光”ツアー客、昼には格安の“影”ツアー客を滞在させる奇策を生み出す。双方の客に悟られぬよう、もう一人のツアーガイド戸川光男(桜木みなと)とともに右往左往するが、光ツアーの小説家・北白川右京(朝夏)と、影ツアーの全員にはあっという間にばれてしまう。だが意外にも事情を知った客たちは、玲子と戸川に協力しようと言い出した。

 実咲さんが演じる玲子はキャリアウーマン風で、キビキビと光ツアーを率いています。『エリザベート』やドラマシティ公演『双頭の鷲』などで悲劇の王妃役が続きましたが、今回は等身大の演技ならではの楽しさが伝わってきます。卒業は残念ですが、安定した実力で朝夏さんとともにクオリティーの高い舞台を作り上げ、トップ娘役としても充実した日々だったことでしょう。

 一方、影ツアーのガイド・戸川は、玲子にビシバシ命令される経験浅い気弱な後輩で、「いるいる、こういう人」と思わずうなずいてしまう男子です。桜木さんのさわやかは、若きプリンスもいいですが、こういった役でも生きてきますね。実咲さんと桜木さんが醸し出す、同期ならではの空気感もお見逃しなく。

 玲子が率いる光ツアーの最もやっかいな客は、なんといってもこの作品の主役、北白川右京でしょう。マッシュルーム風の髪形にピンクの奇抜なスーツで変人風味を漂わせ、執筆を優先するため団体行動には参加せず、玲子を困らせてばかりのめんどうくさいヤツ。わがまま放題なキャラをのびのびと演じる朝夏さんは、小説のアイデアが降りてくると体を不気味にブルブル震わせる様子や、ボケやつっこみの絶妙な間合いで観客を何度も爆笑させ、こんなにもコメディが得意な人だったなんて!と、思わず感動してしまうほど。明らかにヘンなのに、なぜかカッコよさを損なわないのもさすがでした。自作の主人公ルイ14世との“ナマの出会い”から、勝手気ままだった彼の人生観が変わっていく様子は、この作品の大きな柱にもなっています。

◆公演情報◆
宙組公演
ミュージカル・コメディ『王妃の館 -Château de la Reine-』~原作 浅田次郎「王妃の館」(集英社文庫刊)~
スーパーレビュー『VIVA! FESTA!』
2017年2月3日(金)~3月6日(月) 宝塚大劇場
2017年3月31日(金)~4月30日(日) 東京宝塚劇場
[スタッフ]
『王妃の館』
脚本・演出:田渕大輔
『VIVA! FESTA!』
作・演出:中村暁
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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