米国にあって日本に無い芸能人の労働組合
2017年02月24日
前回の「清水富美加氏出家と芸能ムラの『ブラック体質』――コンプライアンス意識の低さを自ら公言する芸能人」に引き続き、宗教団体「幸福の科学」への出家を宣言した女優の清水富美加氏が、所属していた大手芸能事務所「レプロエンタテインメント」から搾取的な待遇を受けたと訴えて、その有無について激しく対立している問題をもとに、芸能界の「ブラック体質」の問題について論じていきたいと思います。
先の記事では、芸能界がかなりのブラック体質であると推測される過去の報道や芸能人の発言を紹介してきました。幸福の科学側が主張していることは事実か否かは分からないので、今回のケースに関して事務所側に搾取的な行いがあったか否か判断できかねますが、芸能人からブラック体質を肯定するような発言が多々出てきていることに鑑みれば、構造的な問題があるのは事実でしょう。
前回、坂上忍氏や井上公造氏による「売れていない時代は収入が5万円でも当然」という旨の発言を紹介しましたが、実際に芸能界で仕事をしている人々から話を聞く限り、本当にそのような「丁稚奉公」的構造がこの21世紀にも残っているようです。
5万円では生活もままならないのは当然ですが、芸能のお仕事は外見にもそれなりの投資をしなければいけない職業であり、当然ある程度のお金がかかります。では5万円しかもらえていないのならば、そのお金はどこから捻出するのでしょうか?
実家からの支援を受けることができれば良いのかもしれませんが、費用を捻出できない人もたくさんいて、中には「パトロン」がいる人も少なくありません。当然、肉体関係があるケースもあります。これを「若者の搾取的構造」と言わずして何と言うのでしょうか?
ところが、このような仕組みに対して疑問を持っている若い女性芸能人はさほど多くないようなのです。以前、男性の俳優に比べて女優の役が年齢とともに仕事の枠が大幅に減ることが問題ではないかという話を芸能界にいる友人に話したところ、「でも大半の女性は若い時だけチヤホヤされる仕事をして後はお金持ちの男性と結婚すれば良いと考えているからね」と言われてしまいました。
社会やファンが芸能に関して「プロ」を求めていないことがそもそもの元凶だと思いますが、それゆえ職人意識を持った人が芸能界に集まっていないという現実も、パトロンのような仕組みが無くならない背景の一つとも言えそうです。
また、芸能事務所が、独立した芸能人を出演させないようにテレビ局等に圧力をかけて、芸能人生を潰すという話も耳にします。能年玲奈(のん)氏のように、本名が使えなくなってしまうケースもあります。移籍をした際に、以前の所属事務所と現在の事務所で争って法廷に至る泥仕合まで発展しているケースもあるわけです。
「業界」の人々から話を聞いていると、私としては「何でそんなにいつも争っているのか」「利益を生まない縄張り争いやいがみ合いに時間を割けるその感覚が信じられない」としか思えず、外から見ると芸能ムラは「異常」な景色にしか見えませんでした。
報じるメディアの側にも強い疑問を感じています。
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