【月刊タカラヅカ】留依蒔世、新人公演で初主演
【朝日新聞紙面より】私はこう演じる。そんな気迫に満ちていた。宙組の留依蒔世(るいまきせ)が2月21日、コメディー「王妃の館」で新人公演の初主演を果たした。トップスター朝夏(あさか)まなとの演技をなぞらず、シリアスさを深めた役づくり。存在感たっぷりだった。
「役を濃くつくらないとコメディーにならない。難しいですね。もっと掘り下げられる」。終演後、反省の言葉をもらしたが、手応えを感じたに違いない。わがままで変わり者の作家北白川右京を、真剣であるがゆえにおかしみがにじむ演技で造形してみせた。
2011年入団で、新人公演に主演できるチャンスは今年限り。告げられたときは泣いた。
おととしから昨年にかけて、けがで舞台を半年休んだ。悔しく情けない思いに沈んだだけに、喜びもプレッシャーも大きかった。しかも難しい喜劇。兵庫県尼崎市出身で、関西育ちのご多分に漏れず、テレビで吉本新喜劇に親しんだ。お笑いのセンスを生かし、ぶつかっていった。
子どものころはバレリーナになりたかった。宝塚に入ると決めたのは、「エリザベート」の水夏希トートにキュ~ンとなって。いま情熱的な男役路線を走る。芝居も達者だ。「こんな男役もできるんだと思ってほしい。いつも真っ白な気持ちで役に向き合っていきます」
終演あいさつで見せた涙。けがの苦い体験をへて、組子やファンへの感謝があふれたのね。さあ、これから。笑顔で高みを目指して。