西森路代(にしもり・みちよ) フリーライター
フリーライター。1972年生まれ。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)がある。
『逃げ恥』や過去の月9『ロングバケーション』『HERO』に学ぶこと
「月9」(月曜9時のフジテレビ系ドラマ)関連のニュースを見ると、最低視聴率を更新したというものや、低迷について書かれた記事がどんどん出てくる。
気になる話題を叩けば読まれるだろうが、私自身、そういうことにはあまり加担したくないし、もしも書くのならば、単に悪いところをあげつらうだけにはしたくないのだが、確かに月9には、もっとこうしたらよくなるのではないかと思うところはたくさんある。
むしろ、今まで月9という枠に楽しませてもらったからこそ、どうしたらよいのかを真剣に考えたいとも思う。
そのためには、今、人々がなんとなく嫌がることを考える必要があるのではないだろうか。
私がネットを見ていて人々が嫌悪感を持つのは、うわっつらの意見だけを理解した気になってすくいとってまとめられたり、市場の動向を見て、「今、ターゲットが求めているのはこれだ!」と安易に決めつけられることではないかと思う。
例えば、「ダサピンク」という言葉があるが、これは女性だったらピンクが好きだろうという甘い見積もりのもと、女性向けの商品にピンクを取り入れることだ。
また、女性は恋愛ものが好きだからと考えて、必要のないストーリーにまで唐突に恋愛要素を入れたりすることにも反発を覚える人は多い。ほかにも、海外から来た映画に、無理やりテーマを無視してビジュアルやタイトルをマイルドなイメージにしてしまうことに違和感を持つ人も存在する。
しかし、そのターゲットとされている女性たちは、何もピンクや恋愛ものが嫌いなわけではないのだ。そのターゲットのことを深く考えもせずに、キャッチ―でわかりやすい要素さえ入れれば反射的に飛びつくと考えたり、テーマを無視して改変したりすることに反発を覚えているのだ。
この感覚を、月9に覚えている人は多いだろう。月9は、単に「恋愛もの」が求められていないから停滞しているのだろうか? 私はそうではないと思うし、そこに疑問を持つことから考えないといけないと思う。
もしも恋愛ものに世の中の人々が辟易していたら、2016年に「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)はヒットしなかっただろう。しかし、なぜ「逃げ恥」はヒットしたのだろうか。
ヒットの要因を箇条書きにすると、新垣結衣さんや星野源さんというキャスティングがよかったこと、恋ダンスがキャッチ―だったこと、ムズキュンのシーンがいっぱいあったこと、漫画原作であったこと、結婚をテーマにしていたことなどが出てくるだろう。
そして、ヒット作を作りたいスタッフは、どのドラマでも、こうした要因をうまく取り入れて企画を立て、その企画に安心して上層部はGOサインを出しただろう。
しかし、ヒット作には箇条書きにはできない要素がある。一言でわかりやすく説明できない部分にこそ、人を引き付けるものは存在している。
例えば、「逃げ恥」でいえば、
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