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平方元基、世界観を観客と共有したい(上)

ミュージカル『王家の紋章』イズミル役に再び挑む

米山麻美子 ライター


拡大ミュージカル『王家の紋章』に出演する平方元基=岸隆子撮影
 古代エジプトの王メンフィスと、考古学好きのアメリカ人少女キャロルとの時空を越えた冒険ロマンスが再び劇場でよみがえる! 1976年から連載され続けている少女漫画の大作を、シルヴェスター・リーヴァイによる音楽、荻田浩一による演出で舞台化したミュージカル『王家の紋章』が、初演から1年を待たずにスピード再演される。

 浦井健治演じるメンフィスと敵対する、ヒッタイト王国の王子イズミル役を、原作のイメージに寄り添いながら演じた平方元基。激しい(激しすぎる!?)気性のメンフィスと違い、クールで落ち着いていながらも、心の底ではメンフィスへの復讐心とキャロルへの愛を熱く燃やすイズミル役に魅せられた方も多いのではないだろうか。

 2011年『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役で本格的にミュージカルデビューして以来、『エリザベート』ルドルフ役(2012年)、『マイ・フェア・レディ』フレディ役(2013年)、『レディ・ベス』フェリペ役(2014年)、『サンセット大通り』ジョー役(2015年)など順調にキャリアを重ねてきた。幅広い役柄を演じながら、常に自然に舞台に溶け込む存在感。「作品そのものを楽しんでほしい」という役者・平方元基のこだわりとは?

 「たくさんの人に愛される原作の世界観を壊さないように」との思いを持って挑んだイズミル役。ビジュアルを作り込むポイントや、新妻聖子と宮澤佐江がダブルキャストで演じるキャロル役への思い、同じくダブルキャストでイズミル役を演じる宮野真守との稽古の様子など、初演時の思い出とともに、「より深まったものをお見せしたい」という再演への意気込みを聞いた。

世界初演、プレッシャーを感じる暇もなかった

拡大ミュージカル『王家の紋章』に出演する平方元基=岸隆子撮影
(写真002)

──初演から約8カ月でのスピード再演。決まったときのお気持ちは?

 まだ初日も開けていないのに再演が決まっちゃって(笑)。嬉しいのと同時に、すこし不安な気持ちも抱えながら初日を迎えたことを覚えていますね。

──世界初演作で、すでに再演も決定しているなか初日を迎えるなんて、滅多にない経験ですよね。プレッシャーはありましたか?

 バタバタしていてプレッシャーを感じる暇もなかったです。ひとつの作品を一から作り上げるって、ほんとうに大変で、とにかく時間がない。舞台稽古の直前に歌詞がついたナンバーもあったんですよ。大変すぎて、健ちゃん(浦井健治さん)と「世界初演作はこうでなくっちゃ!」と追い詰められながら笑いが止まらず、変なテンションになったこともありました(笑)。演出の荻田さんも「平方…いま俺に別の人格が降りてきた。23人目の人格だ」とか言われて。「荻田さん、それ本気? ギャグ?」って聞いたら「…本気かもしれない」って。もうわけわかんない(笑)。でもそれくらいギリギリだったってことです。これまでにも世界初演作に出演した経験はあったので少しは慣れた気になっていましたが、今回のカンパニーでは全員が予想以上に追い込まれながら稽古から初日、千秋楽まで駆け抜けた!というのが実感ですね。

──客席から見ていても、初演ならではの緊張感が伝わってくるようでした。

 緊張感、ありましたよー。稽古しながら「本当にこれできるのかな!?」と思う瞬間が何度もありました。人気漫画の舞台化ですから、「原作ファンの目にどう映るんだろう」という不安もあった。でも幕が上がってみると、お客さまにすごく喜んでいただけて。作品の世界観がすでに完成しているからこそ、安心してできる部分もあることに気がつき、40年以上も支持されている作品の舞台化に関わらせていただく喜びを改めて実感しました。もちろんその世界観を壊さないように、プレッシャーを感じることもありましたけどね。でもこれだけ愛されている作品ですから、原作の世界観にうまく乗って飛べるよう、とにかく一生懸命にやるしかない。演出の荻田さん含め、みんなとにかく必死すぎて、カンパニーの結束感はすごく強まりました。

◆公演情報◆
ミュージカル『王家の紋章』
2017年4月8日(土)~5月7日(日) 東京・帝国劇場
2017年5月13日(土)~31日(水) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
[スタッフ]
原作:細川智栄子あんど芙~みん
『王家の紋章』(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
脚本・作詞・演出:荻田浩一
作曲・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
[出演]
浦井健治、新妻聖子/宮澤佐江(Wキャスト)、宮野真守/平方元基(Wキャスト)、伊礼彼方、濱田めぐみ、山口祐一郎 ほか
公式ホームページ
〈平方元基プロフィール〉
2008年より数多くのテレビドラマに出演。2011年『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役に抜擢され、ミュージカルデビューを果たす。その後も数々の大作ミュージカルに出演。主な舞台主演作品に、『エリザベート』『シラノ』『マイ・フェア・レディ』『レディ・ベス』『アリス・イン・ワンダーランド』『サンセット大通り』『ダンス オブ ヴァンパイア』など。
<衣装>
ジャケット・パンツ・Tシャツ:Psycho Bunny/ジョイックスコーポレーション
靴:fabs classic

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筆者

米山麻美子

米山麻美子(よねやま・まみこ) ライター

東京都出身。2013年より兵庫県在住。小学校から高校まで部活動は演劇部ひとすじ。大学の芸術学部演劇学科に進むも、入学したとたんに興味が映像や障害者福祉など別分野に移り、成人後しばらくは劇場から離れた生活を送る。仕事関係で宝塚歌劇を見たことからふたたび舞台芸術の魅力にはまる。演劇系webサイトで宝塚・ミュージカル・演劇関連の観劇レポートやインタビュー記事を執筆。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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