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加藤和樹、レアティーズ役に挑む(上)

ジョン・ケアード演出『ハムレット』に出演

岩村美佳 フリーランスフォトグラファー、ライター


拡大『ハムレット』に出演する加藤和樹=冨田実布撮影
 ジョン・ケアード演出、内野聖陽が主演する『ハムレット』が、4月9日からの東京芸術劇場プレイハウスを皮切りに、全国7カ所で上演される。ジョン・ケアードは、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の名誉アソシエート・ディレクターとして、様々なシェイクスピア劇を手がけてきた。日本での演出作品も多く、魅力的な作品を作り続けている。今作は、ほぼ全ての俳優が、複数の役を演じることにより、わずか14人で上演するという。劇中で関わりのある役どころを、同じ俳優が演じることにより劇の構造がくっきりと立ち上がる、シェイクスピアを知り尽くしたジョン・ケアード独自の解釈による新たな『ハムレット』だ。

 内野の他、貫地谷しほり、北村有起哉、浅野ゆう子、國村隼など、手だれの名優たちが出演する話題作に、オーディションで参加権を得た加藤和樹が、レアティーズ役(他役もあり)で出演する。ミュージカル『フランケンシュタイン』で新境地を開き、存在感を示したばかりの加藤が、ストレートプレイで新たな挑戦に挑む。稽古がはじまったばかりの加藤に話を聞いた。

新しいものが出来るんじゃないかというワクワク感

拡大『ハムレット』に出演する加藤和樹=冨田実布撮影

――『ハムレット』の稽古はどんな風に進んでいますか?

 2月後半に、ジョンさんとのディスカッションからスタートしました。まずは台本の修正や、日本語に直したときに、どこまで日本のお客様に通じるのかに重きをおいていました。また、ジョンさんのシーンごとの解釈を、みんなで共通認識する作業がありました。実際に稽古に入ったのは3月からです。

――ディスカッションはいかがでしたか?

 以前『タイタニック』で、イギリスの演出家トム・サザーランドさんともやらせて頂きましたが、同じようにディスカッションの時間が設けられていたんです。この作品において何が大切か、このシーンは何を説明しているのかなどについて共通認識を持っておかないと、作品全体にブレが出てくるのかなと思います。日本の演出家作品ではなかなかそういう時間はないですが、ジョンさんもイギリスの演出家ですし、そういう手法があるんだなと思いました。

――何か発見はありましたか?

 『ハムレット』は以前本を読んだことがありました。そこまで深くイメージがあるわけではなかったですが、自分が読んだなりの解釈やイメージと、ジョンさんがやりたい解釈の考え方の違いが面白いと思いました。そういう解釈の仕方もあるんだと。着眼点が全然違うところにあるので、通常の演出ならばセオリーどおりにやるところを、「僕はこう思う。これまではこういう手法でやられているけれど、僕は違うと思う」とはっきり言うので、すごく新しいものが出来るんじゃないかというワクワク感があります。

――「新しい」部分で具体的に伺える内容はありますか?

 「このセリフは本当に必要なのかどうか」というところでしょうか。大胆にカットしているところもあります。もちろん、今まで演じられてきた『ハムレット』は完成されたひとつの作品だと思いますが、藤原道山さんの音楽や、和のテイストを取り入れた衣装など、日本の良さが生かされていて、時代もいろんなものがミクスチャーされています。いい意味でぶっ飛んでいて想像出来ないものが出来上がるんじゃないかというイメージです。ジョンさんのそのイメージにまだ僕たちが付いて行けていないので、セリフや解釈の違い以外に言える部分は難しいですね。予想を遥かに超えてくることだけは言えます。

――他に驚くようなことはありましたか?

 まず、この人数で『ハムレット』をやることだけでもすごいことだと思います。僕もレアティーズ以外にも劇中劇で役者が演じるルシアナスという役を演じさせて頂きます。これだけのキャストがひとり何役かを担うところも面白さのひとつですね。さっきまでメインの役で出ていた人が、すぐに違う役で出てきていて、そこがめちゃくちゃ面白いんですよ(笑)。内野さんが演じるハムレットはセリフも多くて大変な役ですが、それでも2役やるのか……ジョンさんはすごいことをやらせるなと(笑)。

――公式HPの皆さんのコメントを拝見すると、「エネルギッシュ」という表現をされていますね。

 まだ探りつつ作っていて、実際にジョンさんがこうやってもらいたいという肉付けをしている段階です。もっとみんなにセリフが入って、感情が入ってくると、エネルギーも出てくると思います。シェイクスピア作品におけるジョンさんの情熱みたいなものはすごく感じています。僕は『ハムレット』の舞台を見たことがなかったので、上演台本に書かれていること、ジョンさんが言うことをまっすぐに信じようと思っています。他の余計なものを入れたとしても、ジョンさんの演出の前では、それは何の参考にもならず、全く意味を持たないとディスカッションを通して思いました。

◆公演情報◆
『ハムレット』
2017年4月9日(日)~28日(金) 東京・東京芸術劇場 プレイハウス
〈7日(金)・8日(土)プレビュー公演〉
2017年5月3日(水・祝)~7日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2017年5月10日(水) 高知・高知市文化プラザかるぽーと大ホール
2017年5月13日(土)~14日(日) 福岡・北九州劇術劇場 大ホール
2017年5月17日(水) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
2017年5月21日(日) 長野・上田市交流文化芸術センター 大ホール
2017年5月24日(水)~26日(金) 愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
[スタッフ]
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本:ジョン・ケアード、今井麻緒子
演出:ジョン・ケアード
音楽・演奏:藤原道山
[出演]
内野聖陽、貫地谷しほり、北村有起哉、加藤和樹
山口馬木也、今拓哉、壌晴彦、村井國夫、浅野ゆう子、國村隼 ほか
公式ホームページ
〈加藤和樹さんプロフィル〉
アーティスト、俳優。2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、2006年にMini Album『Rough DiamondでCDデビュー。俳優としては、ドラマ『仮面ライダーカブト』『ホタルノヒカリ』『インディゴの夜』などに出演するほか、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN』や時代劇アニメ『義風堂々』、今年話題のアニメ『B-Project*鼓動アンビシャス』などで声優としても活躍。近年の主な舞台出演作品は、『フランケン』『1789 -バスティーユの恋人たち-』『№9-不滅の旋律-』『ペール・ギュント』『タイタニック』『レディ・ベス』など。2017年7月には主演舞台『罠』への出演を控える。音楽活動では6月にZEPP TOURが開催される。
加藤和樹オフィシャルブログ
<衣装>
DISCOVERED(DISCOVEREDl 03-3463-3082)
SHELLAC (SHELLAC DAIKANYAMA 03-5459-2180)

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筆者

岩村美佳

岩村美佳(いわむら・みか) フリーランスフォトグラファー、ライター

ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。現在、演劇分野をメインにライターとしても活動している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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