青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
陰気で陰惨をつきぬけた「へん」さの妙を楽しめないと…
私はNHKの時代劇は陰気で陰惨であることに価値があると思っているので(民放では陰惨なのはなかなか難しい)、『おんな城主 直虎』には久しぶりの陰惨な空気を感じて期待が高まる。
といっても、柴咲コウ演じるところの次郎法師=直虎はけっこう声もカン高くさしたる活躍もせず、ネズミみたいにちょこまかしていて、これは最近よくある「次郎法師は見た」的なアレになるのか、と思わせる。
ただ、今回いいのはあの次郎法師の尼さん姿。柴咲コウに似合っている。ちょろちょろしてる主人公にビターな味わいが出て良い。
そんな柴咲コウがちょろちょろしながら、ストーリーが陰惨で驚く。宇梶剛士はそれなりの役なんだろうと思ったら初回にいきなり首だけになって桶の中に入ってるし、杉本哲太もえーっと思う間に首だけになって床に置かれてるし。
人がどんどん死ぬのは戦国の時代劇ではよくあることで、ちょっと可哀想だなとか思ってもわりとすぐ流せることだ。
しかしこの『直虎』における死は「よくある戦国モノ」とちがう。なんか異物を突きつけられたように「重要人物の死」が来るのである。その異物が腹に落ちていかずいつまでもノドにつまってるような感じ。どう見たってこれは次郎法師の相手役だろうと思われる三浦春馬も死ぬ。派手な春馬の蔭でこういうのはきっと死なないだろ長生きするだろと思ってた高橋一生も死ぬらしい。どうなるんだこの先。
この死にっぷりの重い異物感と、柴咲コウの、尼僧姿がビターとはいえちょろちょろ動き回って活躍するのが、どうも合わない。合わないんだけど、
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